ヒストリー オブ バイオレンス
(デビッド・クローネンバーグ)

自分にはときどき、はまってしまう映画というのが現れて、それが見つかるとだいたい10回以上は見る。オレを自宅で放っておいて、気が付くと同じ映画を見ているので、うちの奥さんに激しく呆れられる。それで、この映画はひさびさのヒットで20回ぐらい見た気がする。なんといっても、この主人公のトムの強いこと強いこと! トムはアメリカの平和な小さな町でレストランを営む平凡で平和な家庭の夫兼父なのだが、実は皆の知らぬその昔、凶暴な殺人鬼ジョーイだったのである。ジョーイはあるとき改心し、名を変え変身し、平凡な人生を送ることに成功するのだが、ある日、自分の店に入ったギャング2人に店の人間が皆殺しにされそうになる危機に直面するにあたって、その持てる本能が突然復活して、物凄い手腕でこの2人を撃ち殺してしまう。そのあといろいろあって、妻と家族は徐々に彼の本性に気付いてゆき、結局、破局。この辺のトムの悲哀は、極めてクローネンバーグらしい独特な悲しみを漲らせていて、この特異な監督が変らず描き出す運命の哀しさにここでも浸ることができる。この悲しみと、ギャングらをやっつけるトムの圧倒的超人的な強さが、とってもいい対照を見せていて、たまらないのである。でも、まあ、こういったまっとうな感想もあるのだが、実際は見ていると、悪い奴らをばったばった殺して行くこのトムの超人的強さに、胸がスカッとする、ってのが、本音かな、うん。