グレンとグレンダ
(エド・ウッド)

史上最低の映画監督エド・ウッドのお次は、この、女装趣味者を描いた作品である。このエド・ウッド、実は、筋金入りの女装趣味で、そののめり込みようはまったく尋常じゃなかったそうだ。この映画では、自らが女装男の役になり、もう、全編、ひたすら女装趣味のなんたるかについて解説している。そのせいで、ナレーションが、もう、映画とはとうてい思えないほど長く、ストーリーなどあってないようなもの。とにかく女装については、いくらしゃべってもしゃべり足らなかったエド・ウッドの、大いなる情熱が感じられる、どうしようもない映画である。物語の主人公は、何も知らない婚約者に自分の趣味をどうやって分かってもらうか苦悩するのだが、とうとう自分の女装趣味をフィアンセに打ち明ける。そのとき彼女が着ていたのがアンゴラのセーター。すかさずナレーションが入り「彼は、フィアンセに深刻な打ち明け話をしているそのときでも、彼女の着ているアンゴラのセーターが欲しくて、目を離すことができないのです」そう、実は、エド・ウッドはアンゴラに目がなく、アンゴラを着ている女性を見ると、なんだかんだ理由をつけて必ずそれを手に入れたそうである。つまり、これは、全くの実話なのである。こんな超個人的な映画をハリウッドで作ってしまう。やはりエドは常人ではない。