不毛地帯
(山本薩夫)

どろどろの政治劇あるけど、見る? と、奥さんに言われて見たのがこれ。この山本薩夫という監督の作品では、これまた有名な権力どろどろ映画の「金環蝕」を既に見ていて、これが2つ目だ。仲代達也演じる元陸軍中佐の壱岐正は、戦時中になめたあまりに非人間的な経験のため、戦後、軍には二度と関わるまいと、ある商社に入社する。しかし、入社したとたんに、アメリカ戦闘機の日本導入をめぐる、政治家と防衛庁と商社三つどもえの血で血を洗う権力闘争に巻き込まれ、後戻りできないところまで一気に突き進む。そして、最後には敗北、そして悲劇、となる。この映画たっぷり3時間もあったのだが、畳み掛けるあまりのすごい緊迫ストーリーに、結局、一気に見ちゃった。終わったら、もう夜中の12時過ぎだ。文句なしに面白い映画ではあるが、しかし、それにしても暗い映画である。ハッピーエンド的なもののかけらもなく、結局のところ「悪」が勝って正義は捻じ曲げられ、敗北感と悲惨さを残していやおうなしに悪が栄えて終わる映画。現実をこれでもかと抉り出して悪を強調することで、人々の目を覚まそうということなのか。この山本薩夫という人は元は左翼系とのことだが、なるほど。それにしても暗すぎる、でも、面白い!