ユング (林道義)


ユングの入門書である。ずいぶん前からずっと気になっていたユングにようやく手を出した、という感じである。本をめったに読まない自分として、とても不思議に感じるのだが、当の本を読むタイミングというのがけっこう重要なのである。読む数が少ないだけに、僕にとって読書は「出会い」とほぼ同じである。別用で図書館にぶらりと寄ったとき、なぜかユングを思い出し、心理学の書架で借りてきた、という、まあ、実に、無意識の意識化的行動である(さっそくユング的 笑)。それにしても、とてもいい出会いであった。僕が勝手に想像していた姿とずいぶん違っていた。もっと、ずっと、神秘的で呪術的な、近寄りにくいオタクっぽい感じ(失礼!)だと思っていたら、違うんだね。とても健全で、意識的で、紹介してくれた著者の見方もあるのかもしれないけど、日が差し込んだ明るい感じだった。少し前にフロイトの精神分析学入門を再読し、人格構造の章にある、人格の奥底で無言のエネルギーの爆発を繰り返す、暗い暗い人格の深部「エス」についての記述を読み、あらためてショックを受けたのだが、ユングの印象はフロイトのこれと好対照をなすものだった。人格の深部、無意識に、暗いものと同時に、明るいものを見出す、ということが、なぜか今の僕にはとても新鮮だった。旧いものは、このたまらない現代ではすでに死に絶えたと思っていたけど、そうじゃなくて、めいめいの無意識の向こうに永遠に生きていて、今でも僕ら自身の意識を経て蘇らせられる、ということを聞いて、とても明るい気持ちになった、ありがとう、と言いたい。