6AQ5 – 6AQ5 ギターアンプ

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Mar 122017
 

スウェーデンでのエレキ練習用にギターアンプを作った。実はかつてココで紹介したトランスレスミニアンプがあったんだが、100Vなのに間違えてスウェーデンの240Vのコンセントに挿し、一瞬で50BM8が死んで、使えなくなっていたのである。アンプがないとエレキを弾いてもつまんないんで、もっぱら生のガットギターを弾いていた。

さすがにエレキを弾きたくなったんで、めんどくさかったんだが、意を決してチューブアンプを作ることにした。さて、何を作るかである。エレキ練習用なんで、基本はChamp系のシングルアンプをちゃちゃっと作るつもりなんだけど、工作道具をほとんど日本に置いてきているので、本格的にはぜんぜん作れない。

で、こっちに、かつてオーディオアンプ製作本の出版(コレです)のために作った、1球ダンボールアンプというものがあった。これは12AU7を1本使ったダンボールに組み込んだ0.2Wていどのモノラルオーディオアンプである。スピーカーも内蔵していて、なかなか可愛い。しかも、これが、けっこう素直ないい音がするのである。古いブルースとかかけると、けっこうしみじみする。

dantube1danboruamp

要はこれをギターアンプに改造すっか、という話である。これで使っている、電源トランス含めた電源回路と出力トランスを使って今回のギターアンプを作るのが一番手っ取り早いので、そうすることにして、こいつは解体しちゃった。段ボールミニオーディオアンプも捨てがたく、ちょっと忍びなかったけどね。

で、回路をどうするかだけど、アルミシャーシーとかの加工は工具が無くできないので、しょせんはやはりダンボールとか木切れで作ろうという魂胆で、そうなると6V6GTのGT管とかでかくて使う気になれないので、MT管を想定する。真空管をはじめ部品は通販で買うが、スウェーデンの片田舎だし勝手も分からずなかなかつらいところだが、真空管を扱っている通販店を見つけたので、そこで部品をあさることにした。

見てみると、なんだかんだで高い。いろいろ探してみると、たまたま安売りセールなんだか6AQ5が安くて千円ちょっとで買える。6AQ5は6V6のMT管バージョンなのでギターアンプにもちょうどいい。順当には6AQ5をパワー管にして12AX7をプリ管にするのだろうが、そのへんは、自分はあまのじゃくなので、あんまりそうする気にならない。

なんとなく、FenderのChampの最も初期の5C1のような5極管を初段にしたいなあ、って思って、通販サイトをあさったが、ミニチュア管の5極電圧増幅管が(Radio tubeっていうカテゴリーだった)、これまた軒並み高くて2000円以上したりする。たかが電圧管になんでこんなに払わないといけないんだ、と思っているうちに思いついたのが、安値のパワー管の6AQ5を初段に使っちゃおう、というアイデアであった。

ちなみに自分は、オーディオアンプを作っていたときからの常で、真空管アンプを作るときは、真空管の名前にこだわる。特性より名前で選ぶのである。だいたい特性なんか回路をあれこれすれば何とでもなるが、名前を変えることはできない。名前の並びが自分の気に入らないとイヤなのである。たとえば、今回みたいな12AX7 – 6AQ5はダメ、ぜんぜんダメ。カッコ悪い。ちなみに自分の今までの傑作は、たとえば、12AU7 – 2A3の並び、これはいい。たぶん他人はぜんぜん分からないと思うが、それでもいいのである。

というわけで、その観点から見ても、6AQ5 – 6AQ5というのは素晴らしい並びでとても気に入った。パワー管をプリに使うのも面白い。というわけで、6AQ5を2本買うことにした。回路は、オーソドックスだけど、ほとんどFenderがまだFenderになる前に作っていたスティールギター用アンプを見習って、ボリュームもトーンも何にもないアンプにすることにした。音量はギター側で調整する。スイッチもなく、コンセントを入れれば音が出る。

設計は横着してSPICEでカットアンドトライでやった。定数決めて、電源回路と出力トランス以外を通販で購入。送料と税金を入れて8000円ぐらいだった。やっぱこっちで電子工作やると高い。ところで、電源トランスと出力トランスであるが、上の回路図にあるように春日無線のトランスだと思い込んでいたら、実際に段ボールアンプを解体したら違うトランスだった。電源トランスはHammondの262E6、出力トランスはFenderのリバーブトランスのReplacementのP-TF22921であった(実は後日人に指摘されて初めて気づいた)。かつてスウェーデンでトランス調達した時、日本から買えないんで外国製を買ったかららしい。

というわけで僕が使っているのは、以下。
電源トランス:262E6
出力トランス:P-TF22921
である。

日本で作る時は春日無線の
電源トランス:B6S12WCD
出力トランス:OUT-41-357
でいいと思う。ただ、特に出力トランスの違いは音に影響するのかもしれない。

さて、最初、木の板に釘を打って、それを端子代わりにして配線するつもりで、リサイクルショップで150円で木を買ったんだが、木がダメで、釘を打ったら一発で割れた。しかも、考えてみれば当たり前なんだが、ユニクロめっきの釘にはハンダが乗らず端子に使えない。やすりでガリガリやればつくかもしればいが、だいたいが、そのやすりが無い。ということで仕方ないんで、またまたダンボールを基板代わりに使って配線した。

配線終わってエレキとスピーカーボックスつないでコンセント入れて、あっさり鳴るだろうと思ったら鳴らない。あれー? 電圧を測ってみると、初段のプレート電圧がほとんど0Vに近く、これじゃあ鳴らないはずだ。動作点がダメダメ。最初、グリッド抵抗に5MΩ入れてゼロバイスしていたのだが、バイアスがまともに動作してないみたいなんで、仕方ないんでゼロバイアス止めて普通のカソードバイアスにした。それでもプレート電圧あまり改善せず。うーむ。

これはこういうことのようだった。最初プレート抵抗に220kΩを入れていたのだが、パワー管の6AQ5ではプレート電流が流れすぎ、220kでの電圧降下が大きすぎるのである。仕方なく、220kを50kまで小さくしたら、ようやく40Vていど確保できるようになった。これでエレキをつなぐと一応音は出た。しかし、ギターのボリュームを上げると、今度はギュエー!とか言ってまともに鳴らない。

このギュエーは順当に考えて発振である。簡単な回路だし、あんまり発振しそうな配線も無いんだがな、と思いつつ、あれこれいじっても一向に改善しない。エレキを抜いて、オーディオソースを入力に入れると、普通に鳴る。ということはアンプ本体で発振しているとも断定しがたい。困った困った。

結局、ほんの偶然からだけど、出力トランスの片側をグラウンドに落とすとギュエーっと言わなくなり、まあまあ普通にギターの音が出た。うーむ、なんで2次側が浮いていると発振みたいな現象になるんだろう、よく理由がわからないが、とにかくそれで治った。たぶん、今後、オレは2次側を必ずアースに落とす人になると思う。

それでもエレキをつなぐと全体にノイズは多めである。この家の電源事情と安エレキのせいもあるかもしれず、あるていどは仕方ないみたいだ。あと、回路部分がダンボール上でむき出しになっているのも問題のようだ。これはやはり金属のシャーシーに収めねば。まあ、あとで、やはりダンボールにアルミフォイルでも貼って、シールドしようと思う。

6AQ5amp配線

というわけで、音は出るようになり、久しぶりのエレキギター、しかも、生々しいチューブアンプの音が嬉しくて、ノイズにも負けずにずいぶん長い時間楽しく弾いた。

とはいえ、さすがにノイズが気になる。やっぱり、音量ボリュームつけようか。というのは、エレキのボリュームを絞っても、当然アンプの全体ノイズはそのままの音量で、ギターの音が小さくなるだけに、うるさい。しかも、ギターのボリュームをフルから下げてゆくと、ギター側(信号源)のインピーダンスが高くなるからだと思うけど、ノイズが倍ぐらいに増える。これは、かなり耳障り。やっぱり、これはボリュームつけるしかないわなと思い、探したらたまたま250kΩのVRが奇跡的にあったので、それをパワー管の前につけた。

この状態で、かなり使えるようにはなったのだが、ギターのシングルコイルの時の音が若干物足りない。やはりゲイン不足なのである。初段のプレート抵抗を50kに落としてしまったので、だいぶゲインが落ちている。せめて100kぐらいにはしたい。ということで、スクリーン抵抗とカソード抵抗をいろいろいじって、プレート抵抗を100kでそこそこ追い込むことができたので、それでフィックスした。

6AQ5amp

しかし、SPICE上ではうまく行くはずだったのにな。だいたいが6AQ5のパワー管をプレート電流1、2mAで使おうというのが無理なのであろう。うまいことシミュレーションできなかったのかもしれない。特性表を見ると、1mAの領域などまったく載っておらず、基本10mA以上である。最終的に1.5mAで使っているが、おそらくそれって、gmも小さくかなり変な領域で使っていることになっているであろう。おとなしく6SJ7でもなんでもいいが電圧増幅管を使っていれば、こんな苦労は無い。でも、いろいろ試せてなかなか楽しかった。

それにしても、最終的な音だが、これはなかなかイイ! 僕の使っているエレキはIbanezのビギナー用の1万5千円ぐらいのギターで、ギターマイクのフロントとミドルがシングルコイルで、リアがハムバッカーなのであるが、このハムバッカーで出した音がいい感じで歪んでいて、だいぶカッコいい。シングルの音も、プレート抵抗を50kから100kに上げてゲインを2倍にしたらすごくいい感じのシングルらしい音になった。

やっぱり、チューブアンプに直の音って、いいなあ。生々しい音で飾りがないので、弾くときの扱いは難しいのだけど、弾いていてすごく気持ちがいい。エレキとチューブとスピーカーの音がそのまま出ている、という感じがいいんだよね。楽しいので毎日弾いている。

以下に、プレート抵抗がまだ50kΩだったときに弾いた演奏と(ハムバッカーのアンプフルテンで弾いて、最後少しだけシングル)、最終的にフィックスしたアンプの解説と試奏のムービーを載せておく。

 

 

以下が配線図。それほど練られてないけれど。このまま作ればうまく行くと思う。幅広の平ラグ版を二つ使えばいいんじゃないでしょうか。

6AQ5ampHaisen

 

 

こんな風に板の上に釘で打ち付けた。この剥き出しは良くないので、もし作る時はアルミのシャーシーとかに入れて作った方がいい。シールドしていないとノイズがかなり大きい。この板アンプも、回路部分はアルミホイルを貼った厚紙でシールドする予定。

6AQ5saishu

チューブ ギターアンプ エフェクト

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Sep 192009
 

※この記事はHPから引っ越してきました

真空管ギターアンプを音作りのエフェクターとして使うプロジェクトである。そもそもの始まりは、ふつうにチューブギターアンプをスピーカーとキャビネット込みで作る、ということだったが、あれこれやっているうちに結局、ギターアンプにはスピーカーはつけずに、一種のエフェクターとしてその出力を、たとえばライブスペースにあるニュートラルなアンプにつないで音を出そう、というところに落ち着いた。

しかも、思いっきりちゃんとしたパワーアンプを作って、ダミー抵抗で受けて、クランチの時のサウンドも、いわゆるパワー管での歪の音を作れるようにしよう、という作戦である。したがって、出来上がりはそこそこ重くて、でかく、はっきり言って機動性は無いが、まあこのていどならライブだったら運んで行っていいかな、というていどのものに仕上げる。

このあと、これに真空管リバーブ回路をつけて、リバーブも込みですべてここでアナログっぽい音作りをしてしまい、極端に言うと出力をPAに入れて鳴らしちゃう、というのも考えている。これまでテストした限り、かなりいい感じの音に仕上がるので、これでリバーブを深めにかけてオールドなブルース、特に僕の好きなMagic Samなんかをやったらとってもよさそうだ。

仮組みテストの状態である

最初のプロジェクト

もともと作っていたアンプがFenderのChampのコピーだったので、ここでもそれで行くことにする。一番最初に作った時は、Champ回路を参考にして、日本製のありあわせのトランスを使って回路定数を設計しなおして作っていた。もう数年以上前になるけれど、そのころは真空管アンプがそこそこに設計できるようになって間もなかったので、自分でやりたくて仕方なかったのである。しかしそんな時期もとっくに過ぎ、今では古典回路をまるごとコピーしても何とも思わなくなった。アナログ装置における「回路」というのはたくさんの要素の中の一つに過ぎず、実際は、配線や実装、部品選び、そしてキャビネットなど、総合的なものだということが分かってきたからである。楽しみどころが実にたくさんあって、ホントいい趣味である。おまけにそれでいい音がでちゃったりすると、2度おいしいといった感じ。

最初に作ったChampもどきは、オークションで落とした校内放送用のスピーカーに組み込んでコンボアンプにまとめてしばらく使っていた。これである。

校内放送スピーカーに組み込んだFenderチャンプ風アンプ

このアンプについてはこちらに詳細を載せている。そして、このアンプで録音した音がこちらである。
クリーントーン
オーバードライブ
ギターは写真に写っている安ボロストラトである。これをHPで公開していたら、なんと、とある知らない人からメールが来て、このサンプルの音は自分が追い求めていた理想の音だ。これは無理を承知で言うが私に譲ってくれないでしょうか、というのである。へーえ、そうなんですか、いいですよ、ということであっさりと一万円でお譲りすることにした。実はそのときは、回路自体を分解してしまっていたので、再び組み上げて、しまってあった校内放送スピーカーを引っ張り出し収めて、その人にお送りした。

KendrickのRoughneck

さて、そんなわけで、最初に作ったアンプはなくなってしまったので、今度はFender純正の部品でもう一回、今度はまるごとコピーで作ってみよう、ということで、アメリカの電気のお店から通販でFenderChampの電源トランスと出力トランスを買った。アメリカのチューブアンプ関連サイトをあさると、すごく充実している。さすがエレキギター発祥の地である。チューブアンプを自作している人も山のようにいるし、回路だってほとんどすべて載ってるし、書籍もやたら出ている。部品だってどんなマイナーなものでもちゃんと揃っている。というわけで、僕が部品調達に使っているのは次のAntique Electronic Supplyというところである。

http://www.tubesandmore.com/

ふつうにWeb上でカートに入れて買い物をして、クレジットカード決算にすれば送られて来る。アメリカ以外は送料が25ドルかかるのでちょっとお高いけど、今なら円高でお得だ。

それにしても日本でFenderの部品って買えないんだろうか? 見つからないだけかな? 本当のところはパワートランスが問題で、100V仕様があるといいのだが。アメリカは119Vなので電源電圧が10%ほど減ってしまうのである。B電源は低く、ヒーター電圧も低くなるので、実はこれで音は変わってしまう道理だが、まあ、あまり気にしない。

さてさて、次に作ろうとした回路だけれど、ChampのMODEL 5F1というやつなのだが、実はアメリカのサイトで回路をあさっていたときにたまたまKendrickのRoughneckというギターアンプの回路を見つけ、それがすごく魅力的でそれにすることにした。これである。

KendrickのRoughneck回路図

Kendrickというのは、アメリカのテキサスのGerald Weberさんという人が作ったギターアンプ工房で、フェンダー系のオリジナルアンプを作るお店である。その頃、友人がこのKendrickのTweed アンプを買ったというので弾かせてもらったことがある。ストラトキャスターをプラグインしてボリュームを上げると、あのキラキラしたフェンダーサウンドでいっぺんに気に入ってしまったのである。ちょうど、スティービー・レイ・ボーンのデビューアルバムの1曲目のロックンロールのあの音そのものである。スゴイ!

そんなわけで、僕もすっかりKendrickが好きになってしまい、これまたネットでいろいろあさっていたんだけど、そのうち、このWeberさんがギターアンプの本を出しているのを見つけ、すぐに買った。これである。

「A DESKTOP REFERENCE OF HIP VINTAGE GUITAR AMPS」という本で、Fenderのチューブアンプを時代順に解説して、それ以外にも、改造ネタやヒントなどなどがたくさん載っている。なんと言ってもギターアンプの回路図が半端じゃない量収録されていて、とてもいい。たしかにネットにもあるけれど、やはり紙になっているのはいい。回路図については FenderだけじゃなくてMarshallやVoxなんかも載っている。これをずいぶん何度も読んで、かなり勉強した。

上記のKendrickのRoughneckは、本の中に書いてあるようないろんな改造ノウハウを使って FenderのChampを改造したものをオリジナル製品として売っているものである。上の回路図も、Fenderのオリジナル回路図のところどころを消して書き足して作ったもので、面白い。ついでに言うと、なんで僕はMarshallでもVoxでもなくFenderかというと、本に収録されたこれら手書きの回路図がFenderのものが一番カッコよかったから、というのもある。実は、自分は、回路図オタクなところがあって、カッコいい回路図じゃないとイヤなのである。たとえば、真空管とトランジスタを混ぜたハイブリッド回路ってのがあって、そういう新しい真空管の世界を追求している人たちがいるが、僕の場合、あれは、技術がどうだとか、音がどうだ、とかいうのはどうでもよく、なにより回路図が美しくならないので全てNGである。カッコ悪いったらありゃしない。

この性癖は、実は僕が小学生だったころの名残りのようである。小学生だった自分が初めてラジオ作りなど始めたとき、なんと言っても自分を惹きつけたのが、あの、当時の自分にはわけの分からない記号が絡み合った回路図と、手書きで書かれた実体配線図だったのだ。ひところなど、大学ノートに何も分からないのに本に載っている回路図や実体配線図を鉛筆できれいにスケッチしまくっていた時期があった。このように、電気については、自分は完全に視覚の美しさから入ったのである。それが、今でも残っている。

さて、Roughneckであるが、オリジナルのフェンダーといくつか違いがある。

  1. パワー管を6V6GTから6L6GCに変えてパワーが上がっている
  2. ドライバーは12AX7から5751に変えている。違いはよく分からないが5751は高信頼管で、ノイズなどに強いかも。あと、いくらか増幅度が小さい
  3. 整流管を5Y3からGZ34(5AR4)に変えてB電源を少し高くしている。あと傍熱管にしたことで電源オン時のチューブへの負担は小さくなるはず
  4. ギター入力にBrightチャネルを作っている
  5. 初段のカソードにバイパスコンデンサーを追加してゲインを上げている。5F1ではこれが無い(5E1には入っている)
  6. NFB抵抗をオリジナルの22kΩから56kΩに変更して歪み感を増やしている
  7. 段間コンデンサーをOrange Drop、電解コンデンサーをSpragueAtomにするなど使用部品にこだわっている
  8. スピーカーを変えている

ざっとこんな感じである。すごく興味のあることろだ。さて、ほどなくしてフェンダーの純正トランスが到着した。しかし、そのころは何に興味が移ったのだか忘れたのだが、なんか別のことをやっていて部品はずっとそのまま放置されたままだった。

チューブギターアンプ エフェクター

これまた気まぐれで、あるとき、せっかくFenderのトランスがあるんだから作ってみようか、という気になった。実は、ずいぶん昔に古物屋で買った、米軍の放出品で、いかにも戦争っぽいルックスの鉄の箱があり、これに全体を収めエフェクターとして持ち歩けるようにしたらカッコいいかな、なんて思ったのである。しかし、知り合いのギタリストに話したら、あのさ、そんな重いエフェクター持ち歩くの最初だけ。ミュージシャンは機動性第一。と言われ、なるほど確かに、と納得してしまった。だいたいが、オレってギアにこだわらず、しかも不精なので、練習にはギターは持って行かず店の借りるわ、あげくの果てにライブにギター持って行くの面倒くさいから店据え置きのボロギターでライブステージやっちゃうわ、と重症にテキトーなヤツなので、たしかにこんな重くてかさばるエフェクターを持って行くはずがない。

そんなこんなで、再び放置。

しかし、ヒマだったんだか、あるとき、とうとうこれを組み上げる気になった。とはいえ、正式組みではなく、そのへんに転がっていた穴の開いた使い古しアルミシャーシーに部品を乗せて、ジャンク箱の部品をあさって超いい加減に作ったのであった。それが、このページの最初にある写真のものである。回路はこれである。

Roughneckを元にした回路

ほとんどRoughneackだけどちょっとだけ違う。しかしたいした違いではない。一番大きな違いはパワー管が6L6じゃなくてChampと同じく6V6なことかも。ダミー抵抗が4Ωじゃなくて8Ωなのは単に手持ちが無かったからである。

できあがって、最初に試したギターはSGである。この頃は、古道具屋で6000千円で買ったネックが上の方で折れて内部回路が切れている韓国製偽SGに夢中で、まず、これをつないだのである。ちなみに、このニセモノSGをそのころ自力でリペアして、ライブとかで使っていたのである。さて、このSGをチューブエフェクターに突っ込んで、出力をVoxの安いデジタルアンプにつなぎ、セッティングをクリーンなフラットにして弾いてみた。そうしたらこれがスゴイいい音! ウォームでナチュラルなディストーションは、これはもう、ブルースブレーカーズ時代のエリック・クラプトンそのものじゃないか! すごいすごい、と一人で喜んじゃったよ。

しかし油断は禁物である。なぜかというと、こういう歪系エフェクターは、実際にバンドでドラムやベースとあるていどの音量で弾かないと分からないのである。往々にしてあるのが、一人で弾いてると抜群なのに、バンドで弾くと音が埋もれちゃって表に出てこない、という事態なのである。そこで、さっそく、行きつけの三軒茶屋のStage pfという演奏し放題バーへ持って行ってテストすることにした。ちなみに宣伝がてらに言っておくと、Stage pfは三軒茶屋駅前のキャロットタワーの道向かいにある店で、チャージを2500円(ワンドリンク込み)払うと、お店の楽器を演奏し放題というところで、手ぶらで行って演奏するには抜群のお店である。楽器は、ほとんど無いものがない、というほど充実している。ここに持ち込み、その日に来ていたドラムやベースの人たちとセッションした。結果は完璧。音が前に出て弾いていて非常に気持ちがいい。

というわけで、このチューブギターアンプエフェクターはかなり使えるヤツだということが分かった。家でVoxのアンプにつないで電子バッキングを流して演奏したブルースがこちらである。

サンプルブルースプレイ

SGのリアピックアップで、アンプのボリュームは7ぐらい、Voxはクリーンでフラット、弾きながらギター側のボリュームをいくらかいじっている。うん、なかなかいい音じゃないか。

いろいろいじる

うまくいったので、次は仮組みから本組みへ行きたいところだが面倒くさい。どうも自分は、工作が好きなわりにはそれほどでもないらしく、半田付けやらなにやら面倒くさくてかなわない。いろいろ構想したり、テストしたりするのは楽しいんだけど、本格的に組み上げるのが苦手である。というわけで、またまた放り出すことになった。そうこうしているうちに、別の工作で手持ちの部品が足りなくなり、仮組みのコイツの部品を取り外して他に使っちゃったり、解体寸前である。

なーんてことをしているうちに、友人のうちにお呼ばれしていった時のこと。彼のうちには、100万も200万もするギターやらアンプやらがたくさんあるのである。そこで、65年のオールドのストラトキャスターを、フェンダーのスタンドアロンのチューブリバーブユニットに入れ、それをSOLDANOのチューブアンプで鳴らしたところ、物凄い音で、改めて最高のギアで鳴らすギターの音の次元が違うことを再認識した。ネックの折れた6000円の偽SGで遊んでる場合じゃない、っていうか、もう、そんなことしてる貧民階級とは根本的に音のクラスが何段階も上、みたいな印象なのである。さすがに参った。こんな音がステージで出せれば、ふつうに弾いてるだけで、音でお客さんを魅了できそうな気がした。

しかし65年ストラトとSOLDANOは以前から知っていたのだが、このフェンダーのリバーブは初めて見た。これがフェンダーのリバーブユニットか。裏を見ると真空管が3本、それと馬鹿でかいリバーブタンクが見える。リバーブかけるしか機能がないくせに、キャビネットなんかむやみに大きい。100Wのギターアンプヘッドぐらいの大きさがある。この無駄さが気に入った。それで、リバーブのかかりだけど、やっぱり何だかおおらかでスケール感があってとてもいい。友人によれば、やはりあのバカでかいリバーブタンクがポイントなんだそうだ。こうなると、がぜんと自分で作りたくなる。回路図は持っているのだ。作れないことはない。これである。

フェンダーのスタンドアロンチューブリバーブユニット回路図

それで思いついたのだけど、あ、そうか、あの仮組みで作ったギターアンプエフェクターに、このリバーブ回路を組み合わせて音作りできるようなものを作ったらどうだろう。例の歪みエフェクターも、歪みとして使うより、むしろアンプシミュレータ的にフェンダーっぽい音を作るのに使ったらどうだろう。もちろん、ボリュームを上げれば歪み用にも使えるわけだ。

ということで、またあの仮組みを引っ張り出してきて、鳴るように元に戻して、今度はSGじゃなくてストラトキャスターをつないでみた。以前はSGをつないで満足しちゃったせいでストラトでは音出しすらしなかったのである。自分の持っている唯一のまともなギターである 74年ストラトキャスターをつないで弾いてみたら、なんだ! ストラトをプラグインしたこのアンプシミュレータ、すごくいい音じゃないか! これはこれでレイボーンみたいな音も出るし、Laylaの中のクラプトンみたいな音も出ている。そっか、これ、やっぱ使えそう、ということになった。

そこで、ちょっといろいろいじってリファインすることにした。まず、真空管だが、6V6GTをいろいろ変えてみた。 6V6GTは自分はなんだか好きな真空管で、すごく地味な感じがするんだけど惹かれるところがある。自分の部屋用のオーディオパワーアンプも6V6GTのプッシュプルである。このオーディオアンプはまたそのうち紹介したいけど、けっこういい音で気に入っているものだ。

ということで、秋葉原とかぶらついていて、6V6GTがジャンクとかで転がっていると何となく買ってしまう。といっても、まだ少ししかないのだけど、まず、Sovtekの新品6V6、それからRCAの一部壊れたジャンク6V6、それからどこのものか不明の汚いジャンク 6V6の3本持っていたので、とっかえて音を出してみた。ちなみに前述のサンプルプレイに使った真空管はRCAのボロいやつである。Sovtekは音はでかいが、どうも硬い音になる。あと、新品なくせしてオーバードライブするとバリッというノイズが入ったりする。使えない。RCAはなかなかいい。ちょっとクリーミーな感じ。最後の汚いやつは、これまたなかなかいい。RCAよりゲインが大きく、くっきりしていていい感じだ。ということで、この汚いやつが良さそう、ということなった。このページの最初の写真に写ってるのがそれである。

それから、それほどひどくないが、さすがにハムがちょっと気になる。ChampはB電源のフィルターコンデンサーの値が見ての通り小さく、ハムを取りきれないのである。じゃあ、でかくすりゃいいじゃないか、というとそうではなく、このCが小さいせいで電源のレギュレーションが微妙に悪化し、音をコンプレスする働きをするそうなのだ。微妙に歪み感が出る、というか。フェンダー系ギターのあの、しゃきっとした、ジャキーン、みたいなキラキラした音は、豊富なハーモニックスが含まれていればこそで、単に上下クリップのファズ系歪みではダメで、倍音の絶妙でリッチなブレンドから生まれるのである。こういった音作りにはハイファイオーディオの知識はあまり役に立たず、むしろ逆の事になることも多い。というわけで、電源のフィルターコンデンサーは考えなしに大きくしてはいけないのである。

とはいえ、エフェクターとしてハムは抑えないといけない。そこで、色々試して、結局スクリーングリッドのところに入っている10μを22μに増やすことでほぼ許容できるところまでハムが小さくなったので、それを採用することにした。あと、弾いてみるとストラトだと若干ゲインが足りず、ハーモニックス感がいくらか薄れるようだ。そのため、Roughneckと同じく初段のカソードには22μのバイパスコンデンサを入れることにした。

以上たいした改良ではないが、最終的にフィックスした機械のこの音は使える。近いうちに、こいつにフェンダーストラトキャスターをプラグインした音を録音して載せるつもりである。

現在は、リバーブに必要な部品がアメリカから届くのを待っているところである。あのバカでかい3スプリングのリバーブタンクと、フェンダー純正のトランス類、そしてリバーブタンクドライブ用の6K6あたりを購入した。届くまでに回路を考えておかないとな。

しかし、オレってヒマなやつだな! ヒマないのに!(笑)