Sep 192009
 

※この記事はHPから引っ越してきました

真空管ギターアンプを音作りのエフェクターとして使うプロジェクトである。そもそもの始まりは、ふつうにチューブギターアンプをスピーカーとキャビネット込みで作る、ということだったが、あれこれやっているうちに結局、ギターアンプにはスピーカーはつけずに、一種のエフェクターとしてその出力を、たとえばライブスペースにあるニュートラルなアンプにつないで音を出そう、というところに落ち着いた。

しかも、思いっきりちゃんとしたパワーアンプを作って、ダミー抵抗で受けて、クランチの時のサウンドも、いわゆるパワー管での歪の音を作れるようにしよう、という作戦である。したがって、出来上がりはそこそこ重くて、でかく、はっきり言って機動性は無いが、まあこのていどならライブだったら運んで行っていいかな、というていどのものに仕上げる。

このあと、これに真空管リバーブ回路をつけて、リバーブも込みですべてここでアナログっぽい音作りをしてしまい、極端に言うと出力をPAに入れて鳴らしちゃう、というのも考えている。これまでテストした限り、かなりいい感じの音に仕上がるので、これでリバーブを深めにかけてオールドなブルース、特に僕の好きなMagic Samなんかをやったらとってもよさそうだ。

仮組みテストの状態である

最初のプロジェクト

もともと作っていたアンプがFenderのChampのコピーだったので、ここでもそれで行くことにする。一番最初に作った時は、Champ回路を参考にして、日本製のありあわせのトランスを使って回路定数を設計しなおして作っていた。もう数年以上前になるけれど、そのころは真空管アンプがそこそこに設計できるようになって間もなかったので、自分でやりたくて仕方なかったのである。しかしそんな時期もとっくに過ぎ、今では古典回路をまるごとコピーしても何とも思わなくなった。アナログ装置における「回路」というのはたくさんの要素の中の一つに過ぎず、実際は、配線や実装、部品選び、そしてキャビネットなど、総合的なものだということが分かってきたからである。楽しみどころが実にたくさんあって、ホントいい趣味である。おまけにそれでいい音がでちゃったりすると、2度おいしいといった感じ。

最初に作ったChampもどきは、オークションで落とした校内放送用のスピーカーに組み込んでコンボアンプにまとめてしばらく使っていた。これである。

校内放送スピーカーに組み込んだFenderチャンプ風アンプ

このアンプについてはこちらに詳細を載せている。そして、このアンプで録音した音がこちらである。
クリーントーン
オーバードライブ
ギターは写真に写っている安ボロストラトである。これをHPで公開していたら、なんと、とある知らない人からメールが来て、このサンプルの音は自分が追い求めていた理想の音だ。これは無理を承知で言うが私に譲ってくれないでしょうか、というのである。へーえ、そうなんですか、いいですよ、ということであっさりと一万円でお譲りすることにした。実はそのときは、回路自体を分解してしまっていたので、再び組み上げて、しまってあった校内放送スピーカーを引っ張り出し収めて、その人にお送りした。

KendrickのRoughneck

さて、そんなわけで、最初に作ったアンプはなくなってしまったので、今度はFender純正の部品でもう一回、今度はまるごとコピーで作ってみよう、ということで、アメリカの電気のお店から通販でFenderChampの電源トランスと出力トランスを買った。アメリカのチューブアンプ関連サイトをあさると、すごく充実している。さすがエレキギター発祥の地である。チューブアンプを自作している人も山のようにいるし、回路だってほとんどすべて載ってるし、書籍もやたら出ている。部品だってどんなマイナーなものでもちゃんと揃っている。というわけで、僕が部品調達に使っているのは次のAntique Electronic Supplyというところである。

http://www.tubesandmore.com/

ふつうにWeb上でカートに入れて買い物をして、クレジットカード決算にすれば送られて来る。アメリカ以外は送料が25ドルかかるのでちょっとお高いけど、今なら円高でお得だ。

それにしても日本でFenderの部品って買えないんだろうか? 見つからないだけかな? 本当のところはパワートランスが問題で、100V仕様があるといいのだが。アメリカは119Vなので電源電圧が10%ほど減ってしまうのである。B電源は低く、ヒーター電圧も低くなるので、実はこれで音は変わってしまう道理だが、まあ、あまり気にしない。

さてさて、次に作ろうとした回路だけれど、ChampのMODEL 5F1というやつなのだが、実はアメリカのサイトで回路をあさっていたときにたまたまKendrickのRoughneckというギターアンプの回路を見つけ、それがすごく魅力的でそれにすることにした。これである。

KendrickのRoughneck回路図

Kendrickというのは、アメリカのテキサスのGerald Weberさんという人が作ったギターアンプ工房で、フェンダー系のオリジナルアンプを作るお店である。その頃、友人がこのKendrickのTweed アンプを買ったというので弾かせてもらったことがある。ストラトキャスターをプラグインしてボリュームを上げると、あのキラキラしたフェンダーサウンドでいっぺんに気に入ってしまったのである。ちょうど、スティービー・レイ・ボーンのデビューアルバムの1曲目のロックンロールのあの音そのものである。スゴイ!

そんなわけで、僕もすっかりKendrickが好きになってしまい、これまたネットでいろいろあさっていたんだけど、そのうち、このWeberさんがギターアンプの本を出しているのを見つけ、すぐに買った。これである。

「A DESKTOP REFERENCE OF HIP VINTAGE GUITAR AMPS」という本で、Fenderのチューブアンプを時代順に解説して、それ以外にも、改造ネタやヒントなどなどがたくさん載っている。なんと言ってもギターアンプの回路図が半端じゃない量収録されていて、とてもいい。たしかにネットにもあるけれど、やはり紙になっているのはいい。回路図については FenderだけじゃなくてMarshallやVoxなんかも載っている。これをずいぶん何度も読んで、かなり勉強した。

上記のKendrickのRoughneckは、本の中に書いてあるようないろんな改造ノウハウを使って FenderのChampを改造したものをオリジナル製品として売っているものである。上の回路図も、Fenderのオリジナル回路図のところどころを消して書き足して作ったもので、面白い。ついでに言うと、なんで僕はMarshallでもVoxでもなくFenderかというと、本に収録されたこれら手書きの回路図がFenderのものが一番カッコよかったから、というのもある。実は、自分は、回路図オタクなところがあって、カッコいい回路図じゃないとイヤなのである。たとえば、真空管とトランジスタを混ぜたハイブリッド回路ってのがあって、そういう新しい真空管の世界を追求している人たちがいるが、僕の場合、あれは、技術がどうだとか、音がどうだ、とかいうのはどうでもよく、なにより回路図が美しくならないので全てNGである。カッコ悪いったらありゃしない。

この性癖は、実は僕が小学生だったころの名残りのようである。小学生だった自分が初めてラジオ作りなど始めたとき、なんと言っても自分を惹きつけたのが、あの、当時の自分にはわけの分からない記号が絡み合った回路図と、手書きで書かれた実体配線図だったのだ。ひところなど、大学ノートに何も分からないのに本に載っている回路図や実体配線図を鉛筆できれいにスケッチしまくっていた時期があった。このように、電気については、自分は完全に視覚の美しさから入ったのである。それが、今でも残っている。

さて、Roughneckであるが、オリジナルのフェンダーといくつか違いがある。

  1. パワー管を6V6GTから6L6GCに変えてパワーが上がっている
  2. ドライバーは12AX7から5751に変えている。違いはよく分からないが5751は高信頼管で、ノイズなどに強いかも。あと、いくらか増幅度が小さい
  3. 整流管を5Y3からGZ34(5AR4)に変えてB電源を少し高くしている。あと傍熱管にしたことで電源オン時のチューブへの負担は小さくなるはず
  4. ギター入力にBrightチャネルを作っている
  5. 初段のカソードにバイパスコンデンサーを追加してゲインを上げている。5F1ではこれが無い(5E1には入っている)
  6. NFB抵抗をオリジナルの22kΩから56kΩに変更して歪み感を増やしている
  7. 段間コンデンサーをOrange Drop、電解コンデンサーをSpragueAtomにするなど使用部品にこだわっている
  8. スピーカーを変えている

ざっとこんな感じである。すごく興味のあることろだ。さて、ほどなくしてフェンダーの純正トランスが到着した。しかし、そのころは何に興味が移ったのだか忘れたのだが、なんか別のことをやっていて部品はずっとそのまま放置されたままだった。

チューブギターアンプ エフェクター

これまた気まぐれで、あるとき、せっかくFenderのトランスがあるんだから作ってみようか、という気になった。実は、ずいぶん昔に古物屋で買った、米軍の放出品で、いかにも戦争っぽいルックスの鉄の箱があり、これに全体を収めエフェクターとして持ち歩けるようにしたらカッコいいかな、なんて思ったのである。しかし、知り合いのギタリストに話したら、あのさ、そんな重いエフェクター持ち歩くの最初だけ。ミュージシャンは機動性第一。と言われ、なるほど確かに、と納得してしまった。だいたいが、オレってギアにこだわらず、しかも不精なので、練習にはギターは持って行かず店の借りるわ、あげくの果てにライブにギター持って行くの面倒くさいから店据え置きのボロギターでライブステージやっちゃうわ、と重症にテキトーなヤツなので、たしかにこんな重くてかさばるエフェクターを持って行くはずがない。

そんなこんなで、再び放置。

しかし、ヒマだったんだか、あるとき、とうとうこれを組み上げる気になった。とはいえ、正式組みではなく、そのへんに転がっていた穴の開いた使い古しアルミシャーシーに部品を乗せて、ジャンク箱の部品をあさって超いい加減に作ったのであった。それが、このページの最初にある写真のものである。回路はこれである。

Roughneckを元にした回路

ほとんどRoughneackだけどちょっとだけ違う。しかしたいした違いではない。一番大きな違いはパワー管が6L6じゃなくてChampと同じく6V6なことかも。ダミー抵抗が4Ωじゃなくて8Ωなのは単に手持ちが無かったからである。

できあがって、最初に試したギターはSGである。この頃は、古道具屋で6000千円で買ったネックが上の方で折れて内部回路が切れている韓国製偽SGに夢中で、まず、これをつないだのである。ちなみに、このニセモノSGをそのころ自力でリペアして、ライブとかで使っていたのである。さて、このSGをチューブエフェクターに突っ込んで、出力をVoxの安いデジタルアンプにつなぎ、セッティングをクリーンなフラットにして弾いてみた。そうしたらこれがスゴイいい音! ウォームでナチュラルなディストーションは、これはもう、ブルースブレーカーズ時代のエリック・クラプトンそのものじゃないか! すごいすごい、と一人で喜んじゃったよ。

しかし油断は禁物である。なぜかというと、こういう歪系エフェクターは、実際にバンドでドラムやベースとあるていどの音量で弾かないと分からないのである。往々にしてあるのが、一人で弾いてると抜群なのに、バンドで弾くと音が埋もれちゃって表に出てこない、という事態なのである。そこで、さっそく、行きつけの三軒茶屋のStage pfという演奏し放題バーへ持って行ってテストすることにした。ちなみに宣伝がてらに言っておくと、Stage pfは三軒茶屋駅前のキャロットタワーの道向かいにある店で、チャージを2500円(ワンドリンク込み)払うと、お店の楽器を演奏し放題というところで、手ぶらで行って演奏するには抜群のお店である。楽器は、ほとんど無いものがない、というほど充実している。ここに持ち込み、その日に来ていたドラムやベースの人たちとセッションした。結果は完璧。音が前に出て弾いていて非常に気持ちがいい。

というわけで、このチューブギターアンプエフェクターはかなり使えるヤツだということが分かった。家でVoxのアンプにつないで電子バッキングを流して演奏したブルースがこちらである。

サンプルブルースプレイ

SGのリアピックアップで、アンプのボリュームは7ぐらい、Voxはクリーンでフラット、弾きながらギター側のボリュームをいくらかいじっている。うん、なかなかいい音じゃないか。

いろいろいじる

うまくいったので、次は仮組みから本組みへ行きたいところだが面倒くさい。どうも自分は、工作が好きなわりにはそれほどでもないらしく、半田付けやらなにやら面倒くさくてかなわない。いろいろ構想したり、テストしたりするのは楽しいんだけど、本格的に組み上げるのが苦手である。というわけで、またまた放り出すことになった。そうこうしているうちに、別の工作で手持ちの部品が足りなくなり、仮組みのコイツの部品を取り外して他に使っちゃったり、解体寸前である。

なーんてことをしているうちに、友人のうちにお呼ばれしていった時のこと。彼のうちには、100万も200万もするギターやらアンプやらがたくさんあるのである。そこで、65年のオールドのストラトキャスターを、フェンダーのスタンドアロンのチューブリバーブユニットに入れ、それをSOLDANOのチューブアンプで鳴らしたところ、物凄い音で、改めて最高のギアで鳴らすギターの音の次元が違うことを再認識した。ネックの折れた6000円の偽SGで遊んでる場合じゃない、っていうか、もう、そんなことしてる貧民階級とは根本的に音のクラスが何段階も上、みたいな印象なのである。さすがに参った。こんな音がステージで出せれば、ふつうに弾いてるだけで、音でお客さんを魅了できそうな気がした。

しかし65年ストラトとSOLDANOは以前から知っていたのだが、このフェンダーのリバーブは初めて見た。これがフェンダーのリバーブユニットか。裏を見ると真空管が3本、それと馬鹿でかいリバーブタンクが見える。リバーブかけるしか機能がないくせに、キャビネットなんかむやみに大きい。100Wのギターアンプヘッドぐらいの大きさがある。この無駄さが気に入った。それで、リバーブのかかりだけど、やっぱり何だかおおらかでスケール感があってとてもいい。友人によれば、やはりあのバカでかいリバーブタンクがポイントなんだそうだ。こうなると、がぜんと自分で作りたくなる。回路図は持っているのだ。作れないことはない。これである。

フェンダーのスタンドアロンチューブリバーブユニット回路図

それで思いついたのだけど、あ、そうか、あの仮組みで作ったギターアンプエフェクターに、このリバーブ回路を組み合わせて音作りできるようなものを作ったらどうだろう。例の歪みエフェクターも、歪みとして使うより、むしろアンプシミュレータ的にフェンダーっぽい音を作るのに使ったらどうだろう。もちろん、ボリュームを上げれば歪み用にも使えるわけだ。

ということで、またあの仮組みを引っ張り出してきて、鳴るように元に戻して、今度はSGじゃなくてストラトキャスターをつないでみた。以前はSGをつないで満足しちゃったせいでストラトでは音出しすらしなかったのである。自分の持っている唯一のまともなギターである 74年ストラトキャスターをつないで弾いてみたら、なんだ! ストラトをプラグインしたこのアンプシミュレータ、すごくいい音じゃないか! これはこれでレイボーンみたいな音も出るし、Laylaの中のクラプトンみたいな音も出ている。そっか、これ、やっぱ使えそう、ということになった。

そこで、ちょっといろいろいじってリファインすることにした。まず、真空管だが、6V6GTをいろいろ変えてみた。 6V6GTは自分はなんだか好きな真空管で、すごく地味な感じがするんだけど惹かれるところがある。自分の部屋用のオーディオパワーアンプも6V6GTのプッシュプルである。このオーディオアンプはまたそのうち紹介したいけど、けっこういい音で気に入っているものだ。

ということで、秋葉原とかぶらついていて、6V6GTがジャンクとかで転がっていると何となく買ってしまう。といっても、まだ少ししかないのだけど、まず、Sovtekの新品6V6、それからRCAの一部壊れたジャンク6V6、それからどこのものか不明の汚いジャンク 6V6の3本持っていたので、とっかえて音を出してみた。ちなみに前述のサンプルプレイに使った真空管はRCAのボロいやつである。Sovtekは音はでかいが、どうも硬い音になる。あと、新品なくせしてオーバードライブするとバリッというノイズが入ったりする。使えない。RCAはなかなかいい。ちょっとクリーミーな感じ。最後の汚いやつは、これまたなかなかいい。RCAよりゲインが大きく、くっきりしていていい感じだ。ということで、この汚いやつが良さそう、ということなった。このページの最初の写真に写ってるのがそれである。

それから、それほどひどくないが、さすがにハムがちょっと気になる。ChampはB電源のフィルターコンデンサーの値が見ての通り小さく、ハムを取りきれないのである。じゃあ、でかくすりゃいいじゃないか、というとそうではなく、このCが小さいせいで電源のレギュレーションが微妙に悪化し、音をコンプレスする働きをするそうなのだ。微妙に歪み感が出る、というか。フェンダー系ギターのあの、しゃきっとした、ジャキーン、みたいなキラキラした音は、豊富なハーモニックスが含まれていればこそで、単に上下クリップのファズ系歪みではダメで、倍音の絶妙でリッチなブレンドから生まれるのである。こういった音作りにはハイファイオーディオの知識はあまり役に立たず、むしろ逆の事になることも多い。というわけで、電源のフィルターコンデンサーは考えなしに大きくしてはいけないのである。

とはいえ、エフェクターとしてハムは抑えないといけない。そこで、色々試して、結局スクリーングリッドのところに入っている10μを22μに増やすことでほぼ許容できるところまでハムが小さくなったので、それを採用することにした。あと、弾いてみるとストラトだと若干ゲインが足りず、ハーモニックス感がいくらか薄れるようだ。そのため、Roughneckと同じく初段のカソードには22μのバイパスコンデンサを入れることにした。

以上たいした改良ではないが、最終的にフィックスした機械のこの音は使える。近いうちに、こいつにフェンダーストラトキャスターをプラグインした音を録音して載せるつもりである。

現在は、リバーブに必要な部品がアメリカから届くのを待っているところである。あのバカでかい3スプリングのリバーブタンクと、フェンダー純正のトランス類、そしてリバーブタンクドライブ用の6K6あたりを購入した。届くまでに回路を考えておかないとな。

しかし、オレってヒマなやつだな! ヒマないのに!(笑)