林正樹

Mar 122017
 

スウェーデンでのエレキ練習用にギターアンプを作った。実はかつてココで紹介したトランスレスミニアンプがあったんだが、100Vなのに間違えてスウェーデンの240Vのコンセントに挿し、一瞬で50BM8が死んで、使えなくなっていたのである。アンプがないとエレキを弾いてもつまんないんで、もっぱら生のガットギターを弾いていた。

さすがにエレキを弾きたくなったんで、めんどくさかったんだが、意を決してチューブアンプを作ることにした。さて、何を作るかである。エレキ練習用なんで、基本はChamp系のシングルアンプをちゃちゃっと作るつもりなんだけど、工作道具をほとんど日本に置いてきているので、本格的にはぜんぜん作れない。

で、こっちに、かつてオーディオアンプ製作本の出版(コレです)のために作った、1球ダンボールアンプというものがあった。これは12AU7を1本使ったダンボールに組み込んだ0.2Wていどのモノラルオーディオアンプである。スピーカーも内蔵していて、なかなか可愛い。しかも、これが、けっこう素直ないい音がするのである。古いブルースとかかけると、けっこうしみじみする。

dantube1danboruamp

要はこれをギターアンプに改造すっか、という話である。これで使っている、電源トランス含めた電源回路と出力トランスを使って今回のギターアンプを作るのが一番手っ取り早いので、そうすることにして、こいつは解体しちゃった。段ボールミニオーディオアンプも捨てがたく、ちょっと忍びなかったけどね。

で、回路をどうするかだけど、アルミシャーシーとかの加工は工具が無くできないので、しょせんはやはりダンボールとか木切れで作ろうという魂胆で、そうなると6V6GTのGT管とかでかくて使う気になれないので、MT管を想定する。真空管をはじめ部品は通販で買うが、スウェーデンの片田舎だし勝手も分からずなかなかつらいところだが、真空管を扱っている通販店を見つけたので、そこで部品をあさることにした。

見てみると、なんだかんだで高い。いろいろ探してみると、たまたま安売りセールなんだか6AQ5が安くて千円ちょっとで買える。6AQ5は6V6のMT管バージョンなのでギターアンプにもちょうどいい。順当には6AQ5をパワー管にして12AX7をプリ管にするのだろうが、そのへんは、自分はあまのじゃくなので、あんまりそうする気にならない。

なんとなく、FenderのChampの最も初期の5C1のような5極管を初段にしたいなあ、って思って、通販サイトをあさったが、ミニチュア管の5極電圧増幅管が(Radio tubeっていうカテゴリーだった)、これまた軒並み高くて2000円以上したりする。たかが電圧管になんでこんなに払わないといけないんだ、と思っているうちに思いついたのが、安値のパワー管の6AQ5を初段に使っちゃおう、というアイデアであった。

ちなみに自分は、オーディオアンプを作っていたときからの常で、真空管アンプを作るときは、真空管の名前にこだわる。特性より名前で選ぶのである。だいたい特性なんか回路をあれこれすれば何とでもなるが、名前を変えることはできない。名前の並びが自分の気に入らないとイヤなのである。たとえば、今回みたいな12AX7 – 6AQ5はダメ、ぜんぜんダメ。カッコ悪い。ちなみに自分の今までの傑作は、たとえば、12AU7 – 2A3の並び、これはいい。たぶん他人はぜんぜん分からないと思うが、それでもいいのである。

というわけで、その観点から見ても、6AQ5 – 6AQ5というのは素晴らしい並びでとても気に入った。パワー管をプリに使うのも面白い。というわけで、6AQ5を2本買うことにした。回路は、オーソドックスだけど、ほとんどFenderがまだFenderになる前に作っていたスティールギター用アンプを見習って、ボリュームもトーンも何にもないアンプにすることにした。音量はギター側で調整する。スイッチもなく、コンセントを入れれば音が出る。

設計は横着してSPICEでカットアンドトライでやった。定数決めて、電源回路と出力トランス以外を通販で購入。送料と税金を入れて8000円ぐらいだった。やっぱこっちで電子工作やると高い。ところで、電源トランスと出力トランスであるが、上の回路図にあるように春日無線のトランスだと思い込んでいたら、実際に段ボールアンプを解体したら違うトランスだった。電源トランスはHammondの262E6、出力トランスはFenderのリバーブトランスのReplacementのP-TF22921であった(実は後日人に指摘されて初めて気づいた)。かつてスウェーデンでトランス調達した時、日本から買えないんで外国製を買ったかららしい。

というわけで僕が使っているのは、以下。
電源トランス:262E6
出力トランス:P-TF22921
である。

日本で作る時は春日無線の
電源トランス:B6S12WCD
出力トランス:OUT-41-357
でいいと思う。ただ、特に出力トランスの違いは音に影響するのかもしれない。

さて、最初、木の板に釘を打って、それを端子代わりにして配線するつもりで、リサイクルショップで150円で木を買ったんだが、木がダメで、釘を打ったら一発で割れた。しかも、考えてみれば当たり前なんだが、ユニクロめっきの釘にはハンダが乗らず端子に使えない。やすりでガリガリやればつくかもしればいが、だいたいが、そのやすりが無い。ということで仕方ないんで、またまたダンボールを基板代わりに使って配線した。

配線終わってエレキとスピーカーボックスつないでコンセント入れて、あっさり鳴るだろうと思ったら鳴らない。あれー? 電圧を測ってみると、初段のプレート電圧がほとんど0Vに近く、これじゃあ鳴らないはずだ。動作点がダメダメ。最初、グリッド抵抗に5MΩ入れてゼロバイスしていたのだが、バイアスがまともに動作してないみたいなんで、仕方ないんでゼロバイアス止めて普通のカソードバイアスにした。それでもプレート電圧あまり改善せず。うーむ。

これはこういうことのようだった。最初プレート抵抗に220kΩを入れていたのだが、パワー管の6AQ5ではプレート電流が流れすぎ、220kでの電圧降下が大きすぎるのである。仕方なく、220kを50kまで小さくしたら、ようやく40Vていど確保できるようになった。これでエレキをつなぐと一応音は出た。しかし、ギターのボリュームを上げると、今度はギュエー!とか言ってまともに鳴らない。

このギュエーは順当に考えて発振である。簡単な回路だし、あんまり発振しそうな配線も無いんだがな、と思いつつ、あれこれいじっても一向に改善しない。エレキを抜いて、オーディオソースを入力に入れると、普通に鳴る。ということはアンプ本体で発振しているとも断定しがたい。困った困った。

結局、ほんの偶然からだけど、出力トランスの片側をグラウンドに落とすとギュエーっと言わなくなり、まあまあ普通にギターの音が出た。うーむ、なんで2次側が浮いていると発振みたいな現象になるんだろう、よく理由がわからないが、とにかくそれで治った。たぶん、今後、オレは2次側を必ずアースに落とす人になると思う。

それでもエレキをつなぐと全体にノイズは多めである。この家の電源事情と安エレキのせいもあるかもしれず、あるていどは仕方ないみたいだ。あと、回路部分がダンボール上でむき出しになっているのも問題のようだ。これはやはり金属のシャーシーに収めねば。まあ、あとで、やはりダンボールにアルミフォイルでも貼って、シールドしようと思う。

6AQ5amp配線

というわけで、音は出るようになり、久しぶりのエレキギター、しかも、生々しいチューブアンプの音が嬉しくて、ノイズにも負けずにずいぶん長い時間楽しく弾いた。

とはいえ、さすがにノイズが気になる。やっぱり、音量ボリュームつけようか。というのは、エレキのボリュームを絞っても、当然アンプの全体ノイズはそのままの音量で、ギターの音が小さくなるだけに、うるさい。しかも、ギターのボリュームをフルから下げてゆくと、ギター側(信号源)のインピーダンスが高くなるからだと思うけど、ノイズが倍ぐらいに増える。これは、かなり耳障り。やっぱり、これはボリュームつけるしかないわなと思い、探したらたまたま250kΩのVRが奇跡的にあったので、それをパワー管の前につけた。

この状態で、かなり使えるようにはなったのだが、ギターのシングルコイルの時の音が若干物足りない。やはりゲイン不足なのである。初段のプレート抵抗を50kに落としてしまったので、だいぶゲインが落ちている。せめて100kぐらいにはしたい。ということで、スクリーン抵抗とカソード抵抗をいろいろいじって、プレート抵抗を100kでそこそこ追い込むことができたので、それでフィックスした。

6AQ5amp

しかし、SPICE上ではうまく行くはずだったのにな。だいたいが6AQ5のパワー管をプレート電流1、2mAで使おうというのが無理なのであろう。うまいことシミュレーションできなかったのかもしれない。特性表を見ると、1mAの領域などまったく載っておらず、基本10mA以上である。最終的に1.5mAで使っているが、おそらくそれって、gmも小さくかなり変な領域で使っていることになっているであろう。おとなしく6SJ7でもなんでもいいが電圧増幅管を使っていれば、こんな苦労は無い。でも、いろいろ試せてなかなか楽しかった。

それにしても、最終的な音だが、これはなかなかイイ! 僕の使っているエレキはIbanezのビギナー用の1万5千円ぐらいのギターで、ギターマイクのフロントとミドルがシングルコイルで、リアがハムバッカーなのであるが、このハムバッカーで出した音がいい感じで歪んでいて、だいぶカッコいい。シングルの音も、プレート抵抗を50kから100kに上げてゲインを2倍にしたらすごくいい感じのシングルらしい音になった。

やっぱり、チューブアンプに直の音って、いいなあ。生々しい音で飾りがないので、弾くときの扱いは難しいのだけど、弾いていてすごく気持ちがいい。エレキとチューブとスピーカーの音がそのまま出ている、という感じがいいんだよね。楽しいので毎日弾いている。

以下に、プレート抵抗がまだ50kΩだったときに弾いた演奏と(ハムバッカーのアンプフルテンで弾いて、最後少しだけシングル)、最終的にフィックスしたアンプの解説と試奏のムービーを載せておく。

 

 

以下が配線図。それほど練られてないけれど。このまま作ればうまく行くと思う。幅広の平ラグ版を二つ使えばいいんじゃないでしょうか。

6AQ5ampHaisen

 

 

こんな風に板の上に釘で打ち付けた。この剥き出しは良くないので、もし作る時はアルミのシャーシーとかに入れて作った方がいい。シールドしていないとノイズがかなり大きい。この板アンプも、回路部分はアルミホイルを貼った厚紙でシールドする予定。

6AQ5saishu

Oct 122014
 

ミニギターアンププロジェクトもずいぶんあれこれ変遷があるが、ここに来てちょっと急ぎで無理やり完成させたプロジェクトがあるので、それを紹介しよう。今までの1Wギターアンプのプロジェクトとは少し違うんで別にした方がよかったんだけど、まあ、ここに入れておく。

夏休みの2か月ほど東京に帰っていたが、9月にまたまたスウェーデンへ戻らないといけない。で、自分は、もうスウェーデンでは真空管工作は止めようと思い、工作道具はほとんど東京に引き上げてきたのである。もしやるのだったら、日本とは別にすべての工具をスウェーデンで揃えないと無理だと思ったからである。日本とスウェーデンを行き来するときにあの重い工具を持って行くのは面倒過ぎる。

というわけで、スウェーデンには今は何にも無いので、真空管アンプを使いたいなら東京で作って持って行かないといけない。実は今回、オーディオアンプは既に東京で完成させて持ち出し準備ができていた。しかし、ギターアンプが無い。もちろん、ミニアンプなんかその辺でいくらでも売ってるので、それを買って使えばいいんだけど、やはりせっかくなのでチューブアンプで弾きたい。

で、やはり、急遽作って持って行くことにした。それがこれである。しかし、重くてかさばるのは持って行きたくないので、とくにかく、小さくて軽いものにしたい。それで、かねてから考えてはいた、トランスレスのギターアンプを作ることにした。

通常、トランスレスのギターアンプというのはあり得ない。なぜなら、トランスレスの場合、AC100Vをそのまま整流して直流電源にするわけだが、原理的にどうしてもACラインの片側がアースに接続されてしまう。ギターアンプの場合、このアースはそのままシールドを介してエレキギターへ、そしてそのまま弦につながっているので、ギターを弾くことは、ACの片側をグワッとつかむことになるのである。めちゃくちゃに、怖い。

もう一つは、入力にエフェクターとかなんだとか別の機器をつないだとき、そっちの機器のACアースの方向によっては機器を壊すことがある。現に自分は、ずいぶん前だが、トランスレスのアンプを作ってそこにマルチレコーダーかなんかの電子機器をつないで、音もなく一瞬で壊したことがある。一瞬で2万円が消えた。

ともかく、知ってのとおり、ACラインの片側は大地にアースされているので、そっち側に触っても何も起こらない。したがって、その大地アースをアース側にしておけば平気である。しかし日本のACコンセントはどちら側にも刺さるので、確率1/2で、これではロシアンルーレットになってしまう。

どちらが大地アース側かは、乾いた指でちょっと触ってビリっと来るか来ないかで判定できるが(冗談です。もっとも事実ですが、真似しないように)、電気的に判定するのにはネオン管を使う。ネオン管の片側をつまんで、もう片側をACラインに触れて、ネオンが点灯する方が感電側で、点灯しない方が大地アース側である。なので、このネオン管をアンプに組み込んで、電源を入れる前に判定して、コンセントの差し込みを安全方向にするようにしておけば、感電せずにエレキが弾けるわけで、それほど危険じゃない。以前に使った以下の回路で出来る。

tless

このAC100V直後の回路がそれである。よく見ると分かるが、電源スイッチをオフの状態で、ACコンセントに挿し、シャーシーに触れてネオンが点灯すればそれが正しい方向である、という回路になっている。今回もこれを使うことにした。

あと、ヒータートランスも使いたくないので、今回は手持ちの50BM8を2本使い、100Vで直接点灯した。ただ、50BM8のように一本でヒーター電圧50Vなどという真空管をギターアンプの初段のように信号レベルの低いところで使ってしまうと、ノイズがひどくなる可能性大であるが、まあ、後で考えようということにした。とにかく、これで出力トランスのみで、非常に軽くて小さいギターアンプができるということだ。

実は、回路図を描いた大学ノートを日本に置いてきてしまい、いま、無いので、仕方ないんでSPICEに残っていた回路図を下に載せておく。今回、回路はSPICE上でカットアンドトライして設計したのである(ここにやり方があり)。これは、慣れれば、かなり楽である。というか、えらく安易だ。でも、別に支障もない。というわけで増幅部はこんな感じで、GAINとワンノブトーンとMASTERの3つのツマミのアンプである。

minigsche

ワンノブトーンは、以前にも使ったが、真ん中で特性フラット、左回しでベースがきき、右回しでトレブルがきくやつである。回路はすこぶる当たり前な原理で、CRのローパスフィルタとハイパスフィルタをポットでミックスしているだけである。使ってみると、なかなか快適である。

電源回路図は無いが、前掲の電源回路とだいたい同じで、倍圧半波整流を使っている。

さて、この回路で急いではんだ付けして作ったのが冒頭のアンプで、非常に軽くて小さい。スウェーデンに持って行き、さっそく、ギターアンプ用キャビネットスピーカーにつないで使ってみたが、まあまあ使える。ただ、前述したようにノイズが大きく、ちょっと耳障りである。やはり、6BM8を2個かなんかにして、コンデンサでヒーター電圧をドロップさせた方がいいのかもしれない。

あと、さすがにミニアンプは、やはりミニっぽい音がする。ヘッドルームが浅いというか。あんまり「コシ」のある音がしない。もっとも、十分使える音ともいう。特に、このアンプはMASTER付きでもあり、クリーンからクランチまで、すべて出る。トーンを絞ってGAINを10にすればウーマントーンも、すごくきれいに出る。なかなか使えるヤツである。次のムービーは、このアンプにムスタングをつないで弾き語ったブルースである。

というわけで、まずはひと段落、と。あ、あと忘れてた。電撃の話だが、こっちで使うときは、230Vから100Vに落とすトランスを使っているので絶縁され、電撃の心配はない。なので、その点はぜんぜん安心なのである。

最後に一応、言っておくが、トランスレスのギターアンプなどという危険な工作は、分かってやっている人以外は絶対やっちゃ、いけません。

May 032014
 

前回でLTSpiceで真空管アンプのシミュレーションをする方法を書いたけど、今回は、実際のギターアンプの回路で、エレキギターの音をシミュレーションした結果を載せておく。あんまり時間ないんで、解説は後にして、取りあえず結果だけね。

まず、回路はこれ。これは、今現在、自分のところで試作して鳴っているミニ真空管アンプの回路をそのままSpiceに入力したもの。

sch

エレキギターの音を録って、WAVファイルにして、それをシミュレーションの入力にして、それで、シミュレーションの出力をやはりWAVファイルに吐き出すようにすることで、音が出せるのである。面白いよね。以下に、簡単に手順を書いておく。

  • Voltage部品のAttribute editorでValueにwavefile=gtest.wavを入力。Attribute editorは部品上でcntrl+右クリックすると出る。これでwav入力ができる。
  • Spice directiveに.wave output.wav 16 44.1k V(out)と書く。これで出力がwavファイルで書き出される
  • Stop timeに入力wavファイルの長さを秒で、Max timestepに(1/サンプリング周波数)の数値を入れる(0.02mと入れた。これは0.02mS=20nS)
  • Edit Simulation CmdでTransientを走らせる
  • シミュレーションはけっこう時間がかかる。10秒の音源で5分以上。いろんな条件でこれは変わるらしく、10秒やるのに1時間以上かかったこともある。

それでは、以下に、入力音源と出力音源を載せておく。使ったギターは74年のムスタング。フロントピックアップのみで、ボリューム、トーン共に最大である。

Input guitar 1 —-> Output Clean, Vol:0.2, Tone:0.0, Gain:0.1, Master:0.05

Volは入力直に入れてあって、ギターの入力レベルを調整する。これは実際の入力の実態と合わせておらず、これを合わせないと、歪み方の査定は実際にはできない。今回は適当にしてある。トーンは、0がトレブル側、1.0がベース側である。この音は、トレブル最大で、Gainを絞って歪なしのクリーントーンである。入力の音にけっこう近いクリーンだが、低音弦などはきれいに抑えられていて、まあまあの音。

Input guitar 2 —-> Output Distortion, Vol:0.2, Tone:0.5, Gain:0.5, Master:0.03

Gainを半分まで上げて歪ませたもの。ただし、ここで使ったPotは全部B型なので、本当はA型で登録しないと0.5の位置は実態に合わない。トーンは中間の0.5なので、このトーン回路では、ほぼフラットな特性。あんまりきれいな歪じゃないけど、シミュレーションでやっているのは、いわば、アンプのヘッドフォン端子にヘッドフォンつないで聞いている状態なんで、高音側のギスギスがけっこう聞こえる。スピーカーから出すと、このギスギスのかなりは消えてゆくので、こんなもんであろう。

Input guitar 3 —-> Output WomanTone, Vol:1.0, Tone:1.0, Gain:1.0, Master:0.02

いわゆるウーマントーン。VolumeとGainを1.0の最大にし、Masterで絞っている。トーンは1.0でベース側に回し切り。この音は、実際に弾いた音とかなりそっくりで、なかなか感動。

以上である。一点言えるのが、今回使った出力トランスが実態と合っていないので、その部分は本来は実際のOPTを計測してSpiceモデリングしないといけない。今回は、Ayumiさんのデータの中のF-475というモデルを使わせてもらった。5kΩ:8Ωのトランスで、一次側のインダクタンスが21.5Hと書いてあり、けっこう大きいので、オーディオ用の高級めのOPTのモデルだと思う。

今回のシミュレーションのデータ一式をZIPで固めて以下に置いたので、ヒマな方はやってみてください。まずLTSpiceをインストールした後、Miniamp.ascっていうファイルをダブルクリックすれば回路図が開く。そのままの状態で、Simulate~Runするととりあえず波形シミュレーションが見られる。回路図上で、見たいところにカーソルをかざして、プローブのアイコンが出たら左クリックすれば、波形が見られる。

LTSpiceExample.zip

Apr 292014
 

はじめに

Spiceというアナログ回路シミュレータがあるのはずっと知っていて、これを使って真空管回路をシミュレートしている人たちがいるのもネットで知っていたけど、なんだか難しそうなので自分ではやらなかった。

たぶんこの道で日本で一番、有名な人はAyumiさんという人で、彼のサイトではSpiceによる真空管アンプのシミュレーションをものすごく丁寧に解説している。すべてを無料で公開していてすばらしい。そうこうしているうちに数年前に本まで出た。「真空管アンプのしくみと基本」という本で、これ一冊ですべてできるみたいだ。ただ、サイトの内容を見ると大量の数式で、たしかに中学校の数学なのだが、僕が見てもなかなかついてゆくのが難しく感じてしまう。

真空管ギターアンプに限ってネットをあさると、Spiceでシミュレーションしている人がぽつりぽつり見つかる。一般的なアナログ回路設計が難しいので、Spice上でまずは仮組して、素子の数値をいじってカットアンドトライで回路設計する、という人もいた。なるほど、これなど、ちょうど僕が板切れの上で半田で仮組して部品をとっかえひっかえして回路設計(決定?)するのと同じである。

あと、音を出している人もいた。シミュレーションソフトの入力にギターを録音したオーディオファイルを入れてシミュレーションして出力をオーディオファイルに落として鳴らすわけである。これは、なかなか面白い。

というわけで、いろいろあるわけだが、今回、とうとう実際にソフトに手を出してやってみた。最初は右も左も分からなかったが、いろんなサイトを参考にして、やっているうちに何とかあるていどできるようになったので、ここに備忘録も兼ねてまとめておこう。

LTSpiceを真空管回路で使う

最初は、大御所のAyumiさんのサイトを読めばあっさりできるかな、って思ったけど、Spiceにもいろいろ種類があるみたいで、さらにそのサブシステムもあれこれあって、ざっと読んでもさっぱりわからなかったので、他のサイトも参考にしながら、LTSpiceというものを使うことに決めて、まずは、やってみることにした。以下は、その手順である。

・LTSpiceのインストール

まず、Linear Technologyのここのサイトへ行く

http://www.linear.com/designtools/software/

ここで、「Download LTspice IV for Windows」のリンクでLTSpiceのインストーラをダウンロードする。リンクをクリックすると、変なポップアップが出て、一瞬アレ?となるが「No thanks」の方を押せばダウンロードが始まる。ダウンロードが終わったらダブルクリックしてふつうにインストールする。

・真空管を部品として登録する

LTSpiceはもともとはディスクリートのデジタル回路やトランジスタ回路なのどのアナログシミュレータで、真空管はそのままでは使えない。なので、真空管回路で使う部品を自分で用意しないといけない。LTSpiceでは、部品を数式でモデリングすることで、使うことができる。モデリング自体は当然、専門知識が無いとかなり難しい。

そこで、当の真空管の用意だが、やはりこれはAyumiさんのデータがすばらしい。100本以上の真空管のモデルをフリーで公開している。サイトは以下。

http://ayumi.cava.jp/audio/index.html

ここの、「電脳時代の真空管アンプ設計—プログラム・データ」のWindows用をダウンロードして解凍する。真空管のデータのみでいい場合は「SPICE用真空管モデル」の方でもよいようだ。

次に、以下の手順で真空管を登録する。ここでは双三極管の12AX7を例にとって説明しよう。

  • .incというファイルが部品のモデリングのファイルである。一方、回路図上のシンボル(図形)を定義しているのが.asyファイルで、これはLTSpiceのインストールディレクトリの下にある。
  • 自分の作業フォルダに、Ayumiさんの解凍ファイルから12AX7.incをコピーする
  • 同じ場所に、”C:\Program Files (x86)\LTC\LTspiceIV\lib\sym\Misc”の中のtriode.asyをコピーしてきて、これを12AX7.asyにリネームする。
  • triode.asyは、図形だけで中身の無い三極管である。このほかに、tetrode.asy(4極管)とpentode.asy(5極管)がある。
  • まず、12AX7.incをテキストエディタで開いて、「^」を「**」に全置換して保存する。演算子の仕様が違うそうだ。
  • 12AX7.asyをテキストエディタで開いて、SYMATTR Value Triode
    SYMATTR Prefix X
    SYMATTR Description This symbol is for use with a subcircuit macromodel that you supply.というところに、12AX7.incの定義を参照する行を付け加え、名前も書きかえる。たとえば次の通り。

    SYMATTR Value 12AX7
    SYMATTR Prefix X
    SYMATTR ModelFile 12AX7.inc
    SYMATTR Description This is 12AX7 made using Ayumi’s lib

以上で、12AX7が使えるようになる。

ここで、.asyファイルと.incファイルの「ピン接続」について書いておく。asyファイルの中の

PINATTR SpiceOrder 1 とかPINATTR SpiceOrder 2

というのがあるが、ここの1, 2, 3というナンバリングと、incファイルの中の

.SUBCKT 12AX7 A G K

のA(プレート)、G(グリッド)、K(カソード)の順番が対応している。なので、他の部品を登録するときは、この規則に注意して、正しいピン番号に割り当てるようにする。

・真空管回路を描く

まずは真空管回路を描くわけだが、面倒なのであんまりここで詳しくは説明しない。たぶん、あれこれやっているうちに描けるようになると思う。ユーザーインターフェースは、まあまあよくできてるんで、マウス操作していれば直感的に習得できると思う。ここでは、分かりにくいところだけあげて書いておく。

  • まずはFileのNew schematicで白紙を開いて、ここに部品を置いて結線して行く。最初に回路図データファイル(.ascファイル)を作業ディレクトリに保存しておいて、取りあえずそこに、asyとかincとかのファイルを入れておけばすぐ参照できる。慣れてきたら、ライブラリー化したり、インストールディレクトリの方に集めておいたりすればいいと思う。
  • 作った真空管を使うときは、Edit~Componentを選び、一番上のTop directoryというところで真空管の.asyファイルがある作業ディレクトリを選べば、12AX7が見えるはずである。それを選べば回路図に置ける。
  • 抵抗、コンデンサ、アースはアイコンから選べばいい。結線は、鉛筆のアイコンでする。
  • 抵抗やコンデンサーの値は、部品の上で右クリックしてウィンドウ内に入力する。コンデンサのμFのμは無いので、「u」を使う。
  • 直流電源は、いくつかあるみたいだが、Edit~Component(アイコンもある。論理回路の形したやつ)で、インストールディレクトリのlib\symの方を選び、その中のMiscのbatteryを選ぶと乾電池のシンボルが出る。このシンボルを右クリックするとウィンドウが出るので、そこのDC Valueにボルト数を入力すればいい。
  • 電源などはラベルを使うと便利である。ラベルは、「A」と描かれたラベルアイコンを押せば出る。たとえば直流電源にVccというラベルを付け、増幅回路の方の電源を供給していところにやはりVccというラベルを付けておけば、電源を供給できる。
  • 信号源は、Edit~Componentの中のMiscの中のsignalを使う。シンボルを右クリックするといろいろ設定できるウィンドウが出てくる。デフォルトでは正弦波のSINEがチェックされていて、DC offsetが0、Amplitudeが1ボルト、Freq(周波数)が1KHzになっているので、ここで数値入力して変えられる。
  • この他、アンプの場合、ボリュームや出力トランスが必要だけど、これらもデフォルトでは無いので、自分で登録しないといけない。これについては、また別ページで書くことにする。

シミュレーションする

回路図が描けたらすぐシミュレーションできる。

Simulate~Edit simulation Cmdを選ぶと設定ウィンドウが開く。ここで、Transientを選ぶと波形のシミュレーションができる。取りあえずStop timeに0.05を入れてOKを押し、Simulate~Runを選べばシミュレーションが始まる。0.05秒間の波形がウィンドウ上で見られる。回路図上で、波形を見たいポイントでプローブのアイコンを出し、左クリックするとそのポイントの波形が出る(複数波形のオーバーラップになっているときは、何回かクリックすると出る)

spice1

次は周波数特性だが、この時は、まず信号源のsignalのシンボルを右クリックして、「Small signal AC analysis」でAC Amplitudeに例えば1を入れておく。それで、Simulate~Edit simulation Cmdを選び、AC Analysisを選び、たとえば、Number of points per octaveに5、Start Frequencyに20、Stop Frequencyに20000を入れる。これで、20Hz~20kHzの周波数特性になる。Simulate~Runを選べばシミュレーションが始まり、周波数特性グラフが出る。これも、回路図上でプローブを出して好きなポイントで左クリックすればいい。実線が振幅特性で、点線が位相特性である。

spice2

素子に流れる電流が見たいときは、回路図上で素子の上にカーソルを持って行き、変なクランプメータらしいアイコンが出たら左クリックする。そうすると、電流値が読める。

回路の各ポイントの直流電圧が見たいときは、信号源のSINEのAmplitudeを0にして、シミュレーションすれば、波形のグラフ上で電圧(直流なので横棒)が読める。

★実際のギターアンプのシミュレーションは、また後日アップします。

参考サイト
Ayumi’s Lab.: オーディオ: http://ayumi.cava.jp/audio/
LTspice入門 : http://www.geocities.jp/side2949be/LTspice.html
LTSpice を使う by Kimio Kosaka : http://make.kosakalab.com/ltspice/

Aug 152013
 

さて、間髪を入れず次の報告。

というのが、かねてより計画していた「オーディオアンプにギターアンプの出力トランスを使う」、というのがけっこううまく行きそうなことが分かったからだ。

最初の試作実験は東栄のT-850という小さな安いトランスでやっていたんだけど、前回に報告したとおり、さすがにどうも低音に力が無い感じだった。そこで、家にたまたま転がっていたフェンダーのChamp用OPTがあったので、それに入れ替えてみた。品番でいうとP-TF22905っていうやつで、大きさは東栄より少し小さく、写真のとおり黒くって素っ気ない。図体も小さいし、オーディオ的にいい音がしそうに見えない。

で、トランス交換して、前と同じ条件で鳴らしてみたんだけど、これがけっこう「イイ」のである。低音の量感もあり、クリアで、しまった感じの音に感じる。そこで、正弦波を入れてシンクロで波形を見てみたんだが、やはり100Hz以下の低音域で、東栄のT-850に比べて波形の崩れが少ない。

もっとも、これはあるていど当然といえば当然で、東栄のT-850は出力2W用で一つ1000円、フェンダーのP-TF22905はひと回り小さいが出力5Wで一つ3000円なのだ。ということなので、東栄のトランスの方が悪いと結論できるわけでもなんでもない。

ここで面白いのが、ギターアンプのトランスはオーディオ用途に使ってもかなりイイということである。一般的にギターアンプ用途の部品は、エレキギターの周波数域だけよければいいので、70Hzから7kHzていどをカバーすれば十分でオーディオ用途には使えない、というのだが、トランスはその限りではなさそうだ、ということである。

ギターアンプの出力トランスをオーディオに使うということでは、ネットでこんな話も聞いた。誰だったか忘れたけど真空管オーディオアンプ製作で著名な人が、新装オープンのジャズバー用に真空管アンプの製作を依頼され、彼はそのアンプにギターアンプのOPTを使ったそうだ。かねてよりギターアンプのOPTはすごいと聞いていたそうだが、実際に自分でやってみてそのすごい実力に驚嘆したそうだ。ただ、これはなかば秘密裏で、シャーシに露出しているOPTにはカバーをかけ中を見えなくしておいたそうだ。使ったOPTはマーシャルの大出力アンプのものだったらしい。

今回、このフェンダーのOPTでしばらくいろいろ聞いてみた。前回書いたように、6BM8の三結パラシングルで内部抵抗500ΩでこのOPTを駆動することで、かなりいい音になっているようで、HiFiアンプとして特に文句もない。そこで今回はこのP-TF22905で行くことに決定した。

あと、電源トランス(PT)もフェンダーのにしようと思ったんだけど、調べたら6BM8が4本分のヒーター電流が取れず、断念した。もちろん、一回り大きいやつを選べばいいんだけど、今度はでかすぎる。そこでノグチトランスの適当なヤツにしておいた。もっとも、ひょっとすると、PTもフェンダーで行った方がいいかもしれない。これは後で考えよう。

それから真空管は、スウェーデンのAC240Vで使うことを考えて50BM8は泣く泣く断念。仕方ないので6BM8を4本で妥協した。

あと、今回これらを組み上げるときは、左チャンネルと右チャンネルの配置と配線を完全に左右対称にすることにする。逆に電源回路のデカップリングとかはあまり気にせず、完全左右対称で攻めてみようと思う。だからなんだ、なんだけど、これは、なんとなく。今まで左右対称をやったことがなかったのである。

ということで最終回路は次のような感じになった。

いまの試作ではモノラルなので、イマイチ最終の音がどんなだか分からないけど、モノラル状態でもけっこういいので、きっとステレオにしたらもっと良くなると思う。

ではでは、また!

Aug 122013
 


前にポストしたように、Gアンプにも使えるオーディオアンプをあれこれ画策していたのだけど、二転三転して、最近はもうオーディオアンプだけでいいや、という感じになってきた。

と、なるとここに載せるのはイマイチ畑違いってことになるんだけど、まあ、再び計画変わることもあるだろうから、ここに載せておこう。

前回の構想は、6BM8の3極管接続のプッシュプルだった。三結と普通の五極管接続の切り替えスイッチをつけて、前者がオーディオアンプ、後者がギターアンプ、とか考えてたんだけど、オーディオアンプとして使う場合はオーディオ用スピーカーをつなぐわけだけど、その状態でいくらギターアンプっぽい回路で鳴らしても、ギターのいい音はしないんだよね。スピーカーもギター用にしないと。

だから、やっぱり、アンプとスピーカーをつないだ状態で、アンプだけオーディオとエレキを切り替えても実質的にあまりいいことは無いわけだ。オーディオスピーカーでエレキギターのいい音を出そうとすると、どうしたってアンプシミュレーターみたいな話になり、真空管回路だけで解決するには無理がある。デジタルのアンプシミュレータを使っちゃうんだったら、わざわざギター入力をつける必要もないわけだ。

というわけで、オーディオ優先ということにした。

では、どうするかだけど、自分的にはどうも6BM8という球の名前が気になるのである。なんだかあんまりカッコよくないのである。同じ特性でヒーターが50Vの50BM8は名前がなんか気に入っているので、これにすれば名前問題は解決になる。50BM8はヒーターを2本直列にしてAC100Vから直接取れるので便利なんだけど、トランスを介さないせいでノイズが気になることを経験済みである。ま、無視できる程度ではあるのだが。

あと、スウェーデンでも使うということを考えると先方はAC240Vなんで50BM8はそもそも使えない、というのも問題である。

ということなんだけど、まあ、取り合えず、自分のうちに50BM8が2本あったので、それで仮組みを試みてみることにした。では回路をどうするか。

オーディオアンプでの自分の経験では、やはり、かの有名な直熱三極管の2A3や300Bがいい音なのである。今自分の部屋では6V6GTの三結プッシュプルなんだけど、なんだかどうしても2A3のシングルに勝てないような気がする。定評のある球というのはそういうものなんだろうか。でも、今回は直熱のでかい球は使いたくない。ということで考えているうちに、オーディオアンプなのでなおさらだが、プッシュプルにこだわることもなく、シングルでもいいかもしれないと思えてきた。

ただ、たとえば6BM8のシングルというのも作ったことはあるんだけど、さすがにいい音とは言いがたく、なんというか素人っぽい音しかしないんだよね。NFBかけたり、三結にしたりしても、やはりなんだかイマイチな感じがする。ただ、6BM8は三結にすると内部抵抗がかなり低くなることについては定評がある球なのである。じゃあ、どれぐらいなんだろう、と思い調べてみると1kΩちょっとみたいだ。これは他の5極管の三結と比べても確かにかなり低い。

2A3や300Bというのは内部抵抗が500Ωていどでかなり低い。その低い内部抵抗で出力トランス(OPT)を駆動するから、ああいう澄んだきちんとした音が出る、とも言われている。5極管ではこれはまず無理なんで、NFBに頼ることになる。特に、出力管そのものに強いNFBをかけて内部抵抗を相当低くしてOPTを駆動する、という原理に基づいたのが、ちまたで有名な「超3極管接続」である。

この通称「超3」は、僕が初めてオーディオアンプを作ったときの回路で、なかなかに思い出深い。6BM8が2本でステレオアンプができる。超素人の自分が作るオーディオアンプなんて、まったく期待していなかったところが、実際に鳴らしてみたらあまりに素晴らしい音でびっくりし、それがきっかけで、一気に真空管アンプ工作の世界に入り込み、およそ10年たって今の自分がある。今思うと「自分で作ったアンプ」から音が出る、という満足感のなせる感動だったと思うのだが、実にいい思い出だ。この顛末についてはこのエッセイに書いてある。

さて、超3をまたやるか、というとそんな気は現在は、まったく無い。回路が相当に変則的でどうも敬遠ってのと、そもそもP-KのNFBというのがどうも自分のノリに合わない。

あ、ちなみに自分は真空管オーディオアンプを設計するときは、一番こだわるのが使う真空管の名前、そして、回路図のルックス、で電気的特性はその次になるんで、特に工学系の人には、自分の情報はなんの役にも立たないので悪しからず(笑

そうこうしていて、2A3並みに低内部抵抗でOPT駆動、ということをつらつら考えているときにひらめいた。それは、6BM8の三結をパラに2本つないでパラシングルにすれば、内部抵抗は1kの半分の500Ωになるじゃないか、ということである。2A3や300Bとほぼ同じ内部抵抗になるわけで、これはいい!

ここまできて、さっそく試したくなり、50BM8を2本で仮組みしてみた。

5極管部の三結をパラ。それで、ついでに、3極管部もパラにしちまえ、ってことで回路定数を適当に決めて作ってみた。それが冒頭の写真と文末の回路である。さっそく、ソースとスピーカーをつないで鳴らしてみたら、音量もあがらずまるでぐちゃぐちゃのひどい音で明らかにこれは「発振」している。2本の球は仮組みシャーシーにすでに空いていた穴にさしていて、けっきょう距離がある。3極管、5極管部の両方をパラにするとなると計7本のビニール線でそれぞれをつなぐのだが、これら平行になった線の間の浮遊容量でいかにも発振しそうだな、と思ってはいたが、案の定、使い物にならないほどひどい発振状態になった。

シンクロで見ると、あらゆる発振でもう波形がぐちゃぐちゃにつぶれている。ありゃー。

というわけで、もう一度見直して、配線を整理したら、まあまあ発振しないていどにはなった。ただ、これも心もとなく、割り箸でビニール線を押さえると全体ゲインがゆれたり、きわめて怪しい動作状態である。

とはいえ、発振しないまあまあのコンディションで、CDとスピーカーをつないで聞いてみた。まあ、きれいな音はしている。ステレオでなくてモノラルなのでイマイチ感はぬぐえないが、まあまあである。ただ、なんとなく低音不足に聞こえる。これは、いくら内部抵抗を下げたからって、OPTそのものがだいぶショボイんで仕方ないとも言う。東栄の一番小さくて安いやつで実験してるのである。せめて、もう2グレードぐらいはOPTを良くしてやらないとわからない。

ちなみに、ダンピングファクターを測ったら2.0だった。これは予想通りで、NFBかけずにDFが2というのはなかなかのものである。僕の作った現用の2A3シングルでもDFは1.6である。

さっき気づいたけど、3極管部までパラにするから発振しやすいんであって、パラは5極管のみにしとけばよさそうだ。そうすると3極管が一本分余るが、それこそ、その余ったのでギターアンプのプリアンプを構成するのもいいかもしれない。

というわけで、今後、まず発振は皆無にする、OPTをもう少しまともにする、あとステレオにする、といった作業をしようと思う。ただ、日本には8月いっぱいで、9月にはまたスウェーデン行きである。それまでに間に合わないかも。

May 122013
 

スウェーデンに来てから10ヶ月目に突入して、そろそろ1年になる。真空管関係のものはなにせ重いので、あまりたくさん持って来れず、このサイトに載せているミニギターアンプだけはかろうじて今も使える状態にしているものの、オーディオ関係はさっぱりである。

日本では、リビング用と自分の部屋用に2つの真空管アンプを使っていた。リビング用は2A3のシングルで、トランス、チョークなども豪勢ででかくたぶん10キロ以上ある。部屋用は6V6GTのプッシュプルでこれまた豪勢な設計をしているせいで2A3アンプほど重くないだろうが、えらくでかい。両者ともけっこう音はいいはずである。特に2A3アンプは、ちゃんとした管球用スピーカをつないで、ついでに使っている球の2A3と12AU7をNOSかなんかのちゃんとしたのに替えちゃったりすれば、相当の癒しのHi-endアンプになりそう。

とまあ、そういうわけなんだが、でかくて重いものは持って来れないので日本に置きっぱなしで放置されている。実にもったいない。今度、思い切って売っちまおうかなと思わないでもない。

そんな状態でスウェーデンに住んで、結局、自分は音楽をほとんど聴いていない。実は自分は音楽を日常的にかける習慣がなく、ときどき思い出したように聞くていどなので、音楽なしで生活ができてしまう。それもあって、ここ10ヶ月はほとんど音なし生活である。もちろん、YouTubeやインターネットラジオでときどき思い出したように聞くことはあるけど、パソコンやスマホから流れる音は、BGMだとしても音がショボイのですぐイヤになってしまう。

それで、ついさいきん僕のスウェーデン暮らしが少なくとも今年いっぱいまで延びることが決定したので、ふーむ、さすがにまだしばらく暮らすんだったら音楽が聞きたいときに聞けるようにしておこうかな、と思い始めた。実際にはそんなの簡単なことで、電気屋にでも行って安値のプラスチックオーディオを買ってくりゃいいのだ。もし僕が音なしには暮らせない人間ならすぐにでもそうするけど、さっき書いたように音なしで大丈夫な自分なので、それでも音楽を聞くとなるとちゃんとしたオーディオの音じゃないとなあ、と思うのである。

申し訳ない、ただのブログになっちゃった(笑) それで本題だけど、オーディオ環境を整備しようと思い立ったという話である。

それで真空管オーディオアンプの構想をあれこれ始めた。実に久しぶりである。構想段階というのは実はけっこうに楽しいもので、ぼんやりしている時間とか、自転車乗ってるときとか、散歩してるときとか、ああでもないこうでもないと、ずーっと考えている。

実は僕のアンプの構想設計というのはぜんぜん工学的ではなく、トータルとしていいコンセプトが構想できるかどうかが一番大切なことで、実は一番大切だと思われる「音」についてはあまり大きなウェイトを占めないのだ。ネットを見ると、真空管オーディオアンプを自作しているアマチュアはすごくたくさんいて、日本では真空管オーディオの層はかなり厚いと思う。で、それらの人たちは多かれ少なかれ元々工学系の人が多いようで、パソコンなどにも抵抗がなかったりするので、みなせっせとパソコンでホームページ作って自作アンプを解説付きで公開している。

それらのサイトを見てみると分かるけど、大半の人たちが工学的な意味での「音」を追求している。そして満足できる「いい音」が、真空管をはじめとする電気部品の電気的な結合によって得られている、という前提で構想、設計、製作をやっている。もちろんそれでいいのだし、それで世の中発展してきたのだけど、こと真空管アンプいじりについては僕はこういう行き方をしない。ではどうかというとほぼ反対向きで、電気部品が先にあって、それがいい感じになるようにいろいろ組み合わせて、それで組み立てて出てきた音が成功だったり失敗だったりする、という行き方である。

まあ、当たるも八卦みたいなものか、あるいは目的をはっきりさせずに遊んでいるか、そんなところである。自分は仕事が工学なので、たぶん、そのせいもあるのかもしれない。そういう工学的な「目的縛り」は仕事でさんざん経験しているし、従わないと上へいけないし、わりと仕方なしにやっているので、好きなことを単にやっている場でも同じことをしたくない、というのがあるのかもしれない。

おっと、またまたブログの文になっちまった。いつになったら本題に入るんだ、え?

本題のオーディオアンプであるが、今のところ、オーディオアンプとしていい音で鳴ってくれて、かつ見た目もあるていどいい感じで、そのままこっちで売り物になるような感じにまとめたいと思っている。

実は、こっちに一人友人がいて、彼が小さなローカルレコード屋をやっているので、最後にはそこで売れるような完成度で仕上がったらいいなと思う。あわよくば彼と一緒に商売につなげたい、なーんて思っているのである。ここVisbyは超観光地で、特に夏場は大陸からバケーションでお金持ちがたくさん来るので、その人たち目当てで真空管オーディオはわりといいんじゃないかと思うからである。もっともビジネスをまともにやる気はないけど、外国での小商いぐらいは想像すると楽しいではないか。

とか何とか考えはじめたら、どこで思いついたんだか、エレキギターも弾けるようにしたいなと思い始めた。オーディオもギターも同じアンプなんで、両用にするのはそれほど難しくないけど、なんだかんだでいろいろスイッチをつけたり真空管を増設したりしないといけないので、先ほどの売り物にもなるオーディオアンプ、という趣旨から外れてしまう。なにかうまい手を考えないといけない。

今のところ構想はここまでだ。

あと、当のオーディオアンプだけど、あれこれ考え、今のところ次のような回路で行こうかと思っているが、突然がらりと変わるかもしれない。

  • 6BM8の3極管接続のプッシュプル。固定バイアス
  • 3極管の一段増幅のあとPK位相反転
  • 無不帰還
  • パワートランスはギターアンプ用を使い、整流管。5Y3がいいかな。
  • 出力トランスもギターアンプ用にしてみたい

ここで、OPTにギターアンプ用を使うなどというのは実際、オーディオ屋から見ると言語道断であろう。ギターアンプはエレキギターの音域に最適化設計されているので、オーディオの広帯域とは逆であり、当然、トランスなどの部品もナローバンドに決まっているし、オーディオで使ってもロクな音がしないだろう、と思われているからである。

しかし、本当にそうなんだろうか。ちょっとネットでギターアンプ用OPTについて調べてみたけど、どうもはっきりした事実が出てこない。たしかにギター用は周波数特性が少しナローだけど、それほど言うほどはナローになっていない。ギター用のOPTはわざわざナローに設計する、という事実も出てこない。逆に、ギター用はナローでいいので、パワー耐性には留意して、あとは安く上がるようにコアボリュームや巻き線や巻き数を決めているらしい、ということが分かるぐらいである。この辺は、トランス製作に詳しい人に教えてもらいたいところだ。

ギターOPTのパワー大きめのものを低出力アンプで使う、っていうのがどうなるかやってみたいところ。10Wアンプに30Wのトランスつけたり。ギターOPTはオーディオに比べてそれほど高価じゃないのでそれができるかな、って思ったりしている。

まあ、もちろんギターアンプOPTを使ってしまったら、万能なオーディオアンプにはならないだろうが、それなりに別次元のオーディオアンプになるかもしれない。そう想像できないだろうか。

などなど考えている。えーと、走り描き回路図を載せて、初回はこんなところで! 進展したら、また!

Jan 172013
 

前回、すごく小さなオーディオで鳴らした音を、ほんの参考として載せたけれど、今回はもうちょっとまともに鳴るようになったのでそのご報告。

前回書いたように、スウェーデンに住んでいる。しかしまだ今のところ何年住むかもよくわからないので、家財道具持って引越しというわけにも行かず、長期出張に来てコンドミニアムを借りて生活している、みたいな程度の持ち物しか持って来ていない。

真空管いじりのための部品や道具も、出国前に、どれぐらい持ってこようか悩んでいるうちに時間切れになり、適当にみつくろってダンボールに入れて持ってきたのだけど、こっちで開けてみるとどうもいろいろ足りないものがあり、事実上、あまり製作実験ができないのである。

このミニアンプは日本で試作してあったやつをそのまま持って来ている。なので、スピーカーさえギターアンプ用のまともなのをつなげば、けっこういい感じになるはずである。とはいえ、知らない土地でそのようなキャビネットを探すのは難しく、特に僕のいるところがVisbyという田舎なんで、お店も限られているし、流通も限られている。

というわけで、現地人に調達してもらうのが一番いい。ここウィスビーにはビヨンというブルース野郎がいて、彼とは前から友達だった。以前来たときに一緒にライブを2回やっていてすでにブルースブラザーズである。ビヨンはBjörnと書くんだけど、あのテニスのビヨン・ボルグのビヨンである。

ビヨンは城壁内の目抜き通りのかなりいい場所に店を構え、小さな中古レコード屋をやって生活している。元は家具職人だったそうだけど腰を痛めて職業替えしたそうだ。木工ができるので、生ギターやエレキギターをリペアしたり、リペアしたのを売ったりもしている。

ところで、店には中古CDも置いているんだけど、LPの方がずっとたくさん売れるそうで、今では店内ほとんどLPである。スウェーデンは住環境と家族をとても大事にする生活をしているようなのだけど、落ち着いた部屋で古風なLPを回してゆったり音楽を聞く、なーんてことが受けてるのかもしれない。少なくともビヨンはそう言っていた。

それで、スピーカーだが、早々にこのビヨンに頼んで調達してもらうことにした。今年になって用意できたよ、っと連絡があったので行ってみると、どこぞから持ってきたオーディオスピーカーのキャビネットを加工してギタースピーカーをマウントしたやつだった。なかなかいい感じで、実にありがたい。

持てかえって、ミニチューブアンプにつないで音を出してみたら、やはりさすがギター用のスピーカー、しかも大きめのキャビネットは違う。けっこういい音で鳴っている。

というわけで、このコンビでいろいろ弾いたところを撮ったムービーがあるので、以下に載せておきます。

Nov 202012
 

小出力アンプの続きなのだけど、ずいぶん間が空いてしまった。

これには理由があって、なんと自分はあれからスウェーデンに移り住んでしまい、いまはゴットランドという島で仕事して生活しているのである。こっちへ来たのが9月下旬なのでほぼ二ヶ月になる。さすがに移住ともなると大変で、真空管をいじっている余裕がなかったのである。

ゴットランド島のウィスビーというところに住んでいるのだけど、ここは街の中心が世界遺産指定という超観光地で、何百年も前の遺跡や廃墟が点在するえらく中世チックな街でヤバイぐらいきれいなところである。加えてバルト海が一望できる自然のすばらしいところである。興味のある人はここのFacebookページにどうぞ。

それはいいのだが、さて、ロックだエレキだライブだとかいう話になるとさっぱりなところで、一応、地元音楽シーンもあるにはあるんだが、東京の規模と比較にならないぐらいローカルで小さい。そんなこんなで未だに活動できていないのである。

こんな風にヒマなところなのは分かっていたので、真空管ギターアンプについては、一応継続できるように最低限のグッズは持ってきた。ただ、そうそう重くてでかいものは持って来れず、少しだけである。とはいえ、現地に慣れるのに時間もかかり、なかなか始められなかったりしたが、ようやく少しだけスタートした。

あと、こっちはACが220Vだというのも厄介で、100Vに変換するトランスは間違って船便に入れてしまったせいでいつまでたっても届かない。で、先日ようやく届き、ようやく日本から持っていったこの小出力アンプの電源を入れて、こっちで鳴らすことができた。

自宅用のミニアンプについて

日本を出る前に、ミニアンプについていくらか調べてみた。ここしばらく一種のブームみたいにもなっているらしく、各社からミニアンプがけっこう出ている。Blackstar、Hughes & Kettner、VOX、Marshall、Orangeなどなどたくさんある。しかもけっこう安かったりもする。もっとも各社チューブアンプといえどもコストと性能の戦いもあり、たぶんほとんどが半導体を使ったハイブリッドだと思う。

特にBlackstarの1WアンプのHT-1Rはけっこう評判がよく、練習用として必要な機能はほぼついている。リバーブ、GAIN/MASTER、トーン、ヘッドフォン、Overdrive切り替え、ライン入力などである。これだけついていれば本当に便利に使える。しかしスペックを見ると真空管は2本。これだけの回路を2本で作るのは無理で、おそらく半分は半導体だろう。

まあ、別にすべて真空管にすればいいというわけじゃないんだが、やはり大人(ジジイ?)は少し値が張ってもフルチューブで気持ちよく弾きたいものだな、と思ったりもする。あと、製品のコメント欄とか口コミをざっと見てみると、「チューブアンプとうたいながら音はけっこうデジタルっぽい」というのが目に付く。実際はどうなんだろう。

弾いてみた

ということで、一度、弾いてみようと思い、仕事帰りに楽器屋に寄ってみた。いろいろ置いてあったけどまずは、Hughes & KettnerのTubeMeister 5ってやつにしてみた。ミニアンプといっても5W。12AX7と12BH7ということなのでたぶんパワー段は12BH7のプッシュプルで、僕が今作ってるのと同じじゃないかと思ったのである。GAIN/MASTER、Overdriveスイッチ、あとミニアンプなのにTREBLE/MIDDLE/BASSと3トーンなのも特徴である。

それでまあストラトをつないで弾いたんだけど、これがまた拍子抜けするほどビンテージチューブアンプの音から遠い音だった。自分は、こんな風にチューブアンプにこだわっているわりには、実はそれほど音にうるさくないのだけど、それでもこれは自分でも分かる。チューブアンプを使い慣れた人間からするとかなり使いにくいと思う。Overdriveなんか入れた日には今風のヘビメタみたいな音しかしない。

そこで、試しにウーマントーンというものをやってみた。ウーマントーンってそれこそもうジジイしか知らないかもしれないが、1960年代にかのエリック・クラプトンが発明した(らしい)音作りで、ギターまたはアンプのトーンをゼロにして超モコモコ状態にしてからアンプのゲインを上げてたくさん歪ませる、という音である。たとえばCREAMのSunshine of your loveのギターの音がそれである。

このウーマントーンはビンテージのチューブアンプでやると独特な味のある音になる。それでこいつをHughes & Kettnerでやってみたんだが、もうこれは、ぜんぜんダメ。まともな音にまるでならない。ヘビメタ系のギスギスした歪み音のトーンを単に絞っただけみたいな、はっきりしない煮え切らない音にしかならない。音が奥に引っ込んでしまいスピーカーのかなた向こうの方から聞こえる音みたいになってしまう。ぜんぜん気持ちよくない。

やはり風評の通りだったんだろうか。これら各社ミニアンプは、けっこう今風でデジタル臭い音しかしないんだろうか。まあ、これは売るためには当たり前で、今風のギタリストたちに売れないことには商売にならないので、今風の音作りをするのは当然なのだ。

ということで、店のあんちゃんに、「これ、ずいぶん今風な音ですね。もっとビンテージのチューブっぽい音のするミニアンプって無いですか?」と聞いてみた。そうしたらあんちゃん、「いや、そういうのあんまり無いんですよ」とあっさり答えたのである。「ビンテージサウンドがいいなら、やっぱりVOXの昔のAC4みたいなビンテージチューブアンプの定番にするか、でも、もしよければこれなんかけっこう音がビンテージですよ」って紹介してくれたのが何だったか忘れたけど半導体アンプだった。「半導体だけどけっこうビンテージしてるんですよ」と言っていた。

結局、まあいいかと調査半ばで店を出てしまった。ビンテージっぽい音のするミニアンプって、意外と無いのかもしれない。

2Wアンプを設計試作

ということで、ビンテージっぽい音のするフルチューブのミニアンプというのは実はわりと作る意味はあるかなと思う。

せっかく作るなら、GAIN/MASTERで歪みも出せて、トーンがついてて、あと古いロックンロールやブルースに必須のリバーブをつける、と。逆にヘビメタっぽい音はいらないのでOverdriveボタンとかは無し、というのがいいかなと思う。

それでとりあえず作ってみたミニアンプがこれである。回路図は試作段階でめちゃくちゃだが、こんな感じ。

12AT7で初段を受けているけど、これは12AX7でもいいかも。リバーブもフルチューブにしているのが何となくこだわりというかはったりというか。FenderのBluesJrなんかでもリバーブ回路は半導体で済ましているし、実はそれで十分なんだけど、ここはあえてチューブでリバーブ。リバーブの原音ミックスはFender式ではなく、カソードフォロアをはさんでミックスしているので、リバーブ切っても原音忠実っぽくなるようにしてある。

出力は12BH7のプッシュプルだけど、何とかいう位相反転のいらない回路。A級のみの動作だそうだが、まあ十分だろう。出力は2Wていど。あと、トーン回路も少し特殊で、ワンノブでBASSとTREBLEを同時コントロールできるタイプの回路を使っている。回路を見ての通り、LPFとHPFの出力を対等にミックスすることで動作する。B型ボリュームを使えば、中央のときにf特がフラット、左に回すとベースがきき、右に回すとトレブルがきくようになっている。

バラックのシャーシーに試作したのがこれ。音を出してみると、まあまあなかなかの音がしている。先日、楽器屋で今風のミニアンプを弾いた後なので余計だが、すこぶるビンテージな音がする。

特に、例のウーマントーンだけど、やってみたらこれがまた気持ちいいったらなんの。今風アンプではありえない生々しい輪郭のはっきりしたいい音がする。こういう音はやはりビンテージフルチューブの回路ならではだと思う。

それからリバーブだが、これまたきれいにかかっている。ただ、初段を12AT7にするとゲイン不足でリバーブのかかりがさすがに足りない。ビーチボーイズみたいなベンチャーズみたいな音を出したいときには厳しい。最初、大きな3本スプリングのリバーブタンクをつないでいたときはまあまあだったが、ミニアンプに合わせてBluesJrに積んである小さなタンクにつけかえたら、リバーブのかかりはさらに悪くなり、さすがに使えないレベルになった。初段を12AX7にして全体調整しなおすか、チューブ1本追加か、という感じである。

ということで、まだまだ試行錯誤段階なのだけど、大筋の方向性はいい感じである。音を次に載せておく。ただ、ここはスウェーデンで、機材が足らず、スピーカにまともなのがない。写真に写っている小さなオーディオ用途のがあるだけで、ギターアンプ用でないのでかなり硬いヘンな音がするし、ビビリがあったり散々だが、感じだけは分かると思う。

ほんの少しクランチ
クリーンでリバーブかけてトーンを上げ
例のウーマントーン

まあまあの音だと思う。このミニアンプは、Fujiyama ElectricのBlues Classicに続くラインナップとして販売まで出来たらいいな、と思っている。あと、この試作アンプに中古のスピーカボックスかなんかをセットにして持ち運べるようにして、ここスウェーデンのウィスビーの田舎で、渋く演奏活動できたら最高である。

Mar 172012
 

ここさいきん、いろいろなところでミニアンプの話題を聞くようになった。本番のライブやスタジオで練習するときはいいとして、家でギターを練習しようってことになると、通常サイズのアンプじゃ音がデカすぎてかなわない。20Wだ30Wだっていうアンプのボリュームをほとんど極限まで絞って音出して弾いていても、当然、いい音がするわけがない。

というわけで、これは昔から、自宅練習用、あるいはバックステージでの練習用のアンプっていうのが売られていた。一番有名なのは、かのFenderのChampであろう。フルチューブで、出力はおよそ5W。特にUSAなんかでは、このChampの回路を元にしたいろんなブティックアンプが作られていて、デザインもカッコよく、家においてもインテリアにもなっちゃう、というのがけっこうある。

Champは6V6GTのシングルで5Wぐらいなのだが、実は家で弾いてみるとわかるけど、5Wでも音はけっこうでかい。特にChamp系はふつうワンボリュームで、あってもトーンが一つていどなので、チューブで歪ませようとしても音がでかくなりすぎ、日本の家屋事情では無理な感じだ。要は、6V6シングルでも音、でかすぎるのである。実際に音を出してみると、自宅の部屋ではパワーは1Wぐらいでも十分な音量になる。

そんなこんなで、少し前から自宅練習用アンプがあの手この手で出てくるようになった感じがする。MarshallがJCM1と称した1Wアンプを出したり、VOXからアンプシミュレータがついたミニアンプが出てたり、あるいは最近ではYAMAHAから、やはりアンプシミュレータと各種エフェクトなど機能満載なTHRという自宅用ミニアンプが発売されたりしていた。特にこのYAMAHAのは飛ぶように売れているらしい。

しかしだ。やはりチューブアンプ派としては、エレキギターの練習はフルチューブアンプでやりたいものだ。アンプシミュレータ付きVOXは自分も持っていて確かに重宝したのだが、何だかしばらく使っていると飽きてしまい、結局、売っぱらってしまった。アンプシミュレータって、自宅ミキシングでラインで録音したりするのにはえらく便利なのだが、一人静かにギターの練習をするのには、自分的にはどうも役不足である。

というわけで練習用の自宅フルチューブミニアンプを作ろう、というプロジェクトを始めたのでその紹介である。

双3極管でプッシュプル

さっき書いたように、パワーは1Wぐらいあれば十分な感じである。シングルでもいいのだけど、プッシュプルの方がハムにも強いし、ひょっとして音もギターアンプらしく本格的でいいんじゃないか、ってことでプリアンプ用の双三極管をプッシュプルで使ってパワー段とすることにする。12AU7や12BH7なんかがちょうどよさそうである。それで、結局まずは、たまたま一本ストックがあった12BH7でやってみることにした。あと、アメリカのKendrickでもこの12BH7をパワー段に使った自宅用ギターアンプが販売されていて、その記憶もあった。

さて、まずはとにかく音を出してみよう、ということで、きわめて普通な回路を組み合わせ仮組みしてみた。回路は以下である。

12AX7を2本使って、一本目でGAIN付きの普通のプリアンプを構成して、こいつをトーンコントロールに送り込む。そしてトーンコントロール出力にMASTERボリュームをつける。ここでトーン回路に、今回はオーディオ用のものを使ってみた。もちろんこの回路はいくつかのギターアンプでも使われていて、別にギターアンプで珍しいわけでもない。

トーンといえば何といってもFenderのあの見慣れた回路がポピュラーだけど、実は自分はあれが苦手である。お店や練習ではFenderを使うことが多いが、あのTreble、Middle、Bassの3つのツマミをまともに扱えたためしがない。何をどうまわしたらどういう音になるのかいまだに分からない。なので、すでにとうの昔に諦めていて、さいきんは全部5にして弾いている。若いころは全部10だったが歳を取ったのであろう(笑)

これにはいくらかまっとうな理由もあって、Fenderのあのトーン回路は全部5にしても周波数特性はフラットにはならない。中域がボコッと落ち込んだ特性になっている。で、ツマミを回しても、いわゆるグラフィックイコライザーみたいな変化はせずに、なんとなく奇怪な変化の仕方をする。それが感覚的にもよく分からないのである。

それに対してオーディオ用のトーン回路は、見事にグラフィックイコライザー的に特性が変化する。なので、低い音が欲しければBASSを右に回せばいいし、高音のキンキンを無くしたければTREBLEを左に回せばいいし、非常に分かりやすい振る舞いをしてくれる。これなら自分でもトーンを使いこなせそうな気がする。

さて、トーンの後は、ポピュラーなムラード型の位相反転を経て、12BH7のPPである。とりあえずカソードバイアスにしておいた。

鳴らしてみる

音はあっさりと出た。なかなかいい音である。実際、測定してみるとこの状態でパワーは1W強なのだが、これでも十分うるさいぐらいに鳴る。GAINとMASTERの2ボリュームなので歪み系の音も作れ、なかなか楽しい。ただ、クリーンはよかったのだが、クランチさせるとどうも歪みの質がイマイチである。なんとなく濁っていて汚い。

シンクロで見てみたら、なんとなく全体に歪みが大きく、特にクランチ状態ではかなりひどいクロスオーバー歪みが出ている。ひょっとすると有り合わせの適当な部品で作っているからかもしれない。

あと、アメリカの掲示板で見たのだが、クランチでのクロスオーバー歪みはカソードバイアスではどうしても出るものらしい。というのは、クランチ状態ではパワー管への入力が過大になり、グリッドがプラスになり盛大にグリッド電流が流れる。それでこの電流は当然プレート電流に加算されてカソード抵抗に流れるので、カソード電位が相当に上がり、そのせいで動作点が狂って歪みになるそうである。なるほど、この辺の知識になると、自分はこのアメリカ掲示板で初めて知った。というのは、僕はずっと日本のオーディオ真空管アンプで勉強してきたのだけど、そもそもオーディオにはオーバードライブにおける動作の話など当然出てこないのである。

ところで、アメリカの掲示板を見るとすごい。チューブギターアンプに関するあらゆる知識や情報がこれでもかというぐらい、しかも、微に入り細に渡り、相当に深く追求した検討が、いくらでも出てくるのである。さすがエレキの本場、というかDIYの本場である。これに比べると日本のギターアンプ自作に関する情報はホント少ない。オーディオはそこそこあるけど、ギターチューブアンプについてはアメリカとはまるっきり比較にならない感じである。

さて、というわけで、パワー段のカソードバイアスはNGで、固定バイアスが良いようである。12BH7ならバイアスは15V前後なので、ヒータートランスの6.3Vを倍圧整流すれば作れそうである。

急遽プリアンプに改造

そうこうしているうちに、2週間後の3/31に久しぶりのライブがあることを思い出した。僕のバンドは少しロック寄りのブルースバンドなのだけど、ドラム・ベース・ギターの3人バンドなんで、ギターの音がけっこう決め手になる。で、今度のライブでは、ジョニー・ウィンターがやっているIt’s My Own Faultっていうスローブルースがやりたくて、彼のデビューアルバムを聞いていたら、あの音が出したくなってきた。

ジョニー・ウィンターの音って独特で、まあ、オレはストラトなのでその時点で間違ってるのだが、あのクランチがかった、でも歪み過ぎない、ちょっとギスギスした感じの微妙なトーンがすごくカッコいい。でも、あの音ってどうやって出してるんだろう? 調べてみると、Firebirdのフロントピックアップで、アンプのセッティングは、VOLとMASTERは10、TREBLEが10でBASSとMIDDLEが0だそうだが、ありゃーすごいセッティング、でも、まあこのまま真似してああなるわけじゃないよね。

それにしても、ストラトをいつものBlues Jrに通しただけであの音になるとは思えない。やはり、真空管でうまい具合に歪ませるべきだろうなー、などと考えているうちに、以前やったSoldano型アンププロジェクトを思い出した。試作したヤツのGAINを絞って弾いた音がけっこうジョニー・ウィンターっぽい歪みだったんだ。これは該当ページの音源にある感じの音である。歪み方が滑らかでなく、コンプレスはあまりかからず音が太い。

ということに思い至り、それまでのミニアンプ構想を放り投げ、試作したヤツをSoldano型に作り変えちゃった。それで出力を、フラットにセッティングしたBlues Jrに入れて弾いてみたら、あら、カッコいい、それっぽい音になってる! これは使えそうだ。かなり歪みがひどいけど独特なエグイ感じでいい!

ちょうど翌日が金曜だったんで、このプリアンプを行きつけのバーに持ち込んで実地試験をすることにした。お店のアンプで鳴らして、ベースとドラムと一緒に演奏してみた。うーん、たしかに音はカッコいいような気はするが、実地でやるとイマイチだ。とにかく歪み過ぎていて、トップノートが出ていない。つまり、コンプレスがかかってしまっていて、ドラム・ベースと一緒に演奏すると音が引っ込んでしまう。あれー、おかしいなー。確かに独特の音ではあるんだが、今風に言うと、いい音とは言いがたく、たまたま来ていたお客もこれを弾いて、この音は俺じゃ使いこなせない! って言ってた通り。

やっぱい、あのエグイ歪みはなんかがおかしいみたいだ。というわけで翌日、アンプの動作を調べてみることにした。まずは各部の電圧を測ると、あれ? 最終段の3極管のカソード電圧がゼロだ、おかしい。よくよく見てみたら、カソードとグリッドを逆に配線していた。ありゃー、こりゃ、ダメだ! この回路でも信号は通るが、ほとんど半波整流回路みたいになっていたらしい。ああ、だからあんなにエグイ歪みだったんだ。なーんだ。

さっそく正しい配線に戻して、改めてギターをつないで弾いてみた。そしたら、なんと、まあ、ものすごくキレイなクリーントーンで拍子抜け。というか、これじゃただのどこにでもあるプリアンプだ。Blues Jrに直に入れて弾いた音となんら変わるところがない。ということは、ほとんど意味がない。それで、GAINを上げて歪ませてみたが、歪んでしまうと、これまたただの特段に変わったところのない滑らかなディストーションで、こんなのなら別に歪みエフェクターを踏めばいい話だ。

うーむ、がっかりだ。

プリの調整

というところで、回路をもう一度いじって欲しい音を追求してみることにした。まず、3つ目の3極管のカソード抵抗を33kから極端に100kに変えてみた、ちょと無茶だ。弾いてみたら単にゲインが落ちただけ。ダメか。ただ33kは小さすぎると思い、50kにしておいた。あと、初段と2段目のカソードバイパスを1μFにしてみた。これはSoldanoで使っている値である。弾いてみた、うん、ちょっと良くなった。次に、電源の平滑回路に入っている抵抗が、ミニアンプのときのままで10kだったのを1kまで落とした。ちょっと良くなった、でもGAINを上げるとどうも歪みが優先してしまいダイナミズムが出ない。

ところで、オレがどんな音を追求しているかというと、歪んだトーンなのにも関わらず、ピッキングのダイナミクスがきちんと保存されている音なのである。強くピッキングしたときの音がバキーン!と鳴って、しかも、全体にクランチがかかっている、というヤツである。これ、意外と難しいんだよね~ 歪むとどうしてもコンプレスがかかちゃうから。

というわけで、ひょっとすると終段(4段目)のところで歪んじゃうのかな、と思い、4段目を止めて、3段目から出力を取り出してみた。

これでやってみたら、うわ、すごくいい音! 上述した感じになってるし、Blues Jrで若干のリバーブをかけるとスローブルースのソロが気持ちよく弾けること弾けること。これはいけそうな音だ。

ライブはちょうど2週間後だが、この時点でこれを使うことに決定。で、本番は厚みのあるいい音で弾きたいので、2箇所から鳴らすことを考えた。以前、同じ大倉山のお店で自作のアンプで弾いたときは、アンプにマイクを立ててもらい、PAからもギター音を出してダブルにしたらすごくいい音だった。それを思い出したのである。ということで、このプリアンプに出力をもうひとつ増設して、2出力にした。本番ではギターアンプを2台使って、このプリアンプから分岐して2台鳴らすことにしよう。

ライブが終わったら、このプリアンプに12BH7のパワーをくっつけて当初の予定通り1Wミニアンプにすることにしよう。あと、2週間だ。